窮地に立つ任天堂 「Wii U」で見せる執念
6月7日午前7時、米ロサンゼルス。世界最大のゲームショー「E3」での“重大発表”を控え、会場前は業界関係者でごった返していた。CBSテレビも朝のニュースで発表内容を憶測して報道。4月末の公式なアナウンスより1カ月、「Nintendo」への期待は最高潮に達しようとしていた。
「Wii U(ウィー・ユー)」--。そのコンセプト映像が流れると、4000人の聴衆は大きく沸き上がった。目を引くのは、本体と別に、6・2インチのタッチパネル画面が搭載されたコントローラ。携帯型ゲーム機やタブレット端末を思い起こさせる、このコントローラこそ新しいゲーム機の肝だ。
「これは娯楽のまったく新しい形です」。ステージに登場した岩田聡社長はキッパリ言い切った。
目指すは必需品の領域 だが発表後、株価は急落
WiiUは任天堂が2006年11月に投入した、据置型ゲーム機「Wii」の後継機である。発売時期は12年中で、価格は2万円(Wiiの現行機)以上とみられる。
『スーパーマリオ』を生み、任天堂を世界的企業に押し上げたカリスマクリエーター、宮本茂専務によれば、「『つい電源を入れてしまう』、もっと言うと『テレビをつける前にWiiから電源を入れる』くらいの感覚で使ってもらえるような、リビングの道具にしようと思って作った」のが、現行Wiiだ。累計販売8600万台を記録したが、当初のコンセプトは完全には実現できず、宮本専務らは納得しなかった。
「リビングにあるべき機械として、Wiiでチャレンジしたことの完成度をもっと上げたい」(宮本専務)という、5年越しの思いがWiiUにはこもっている。
WiiU本体が再生する映像は、つねに無線でコントローラに送られている。これによって、テレビの大画面とタッチパネル画面の両方を生かしたゲームができるほか、テレビで別の番組を流しているとき、手に持っているコントローラのタッチパネル画面だけで遊ぶこともできる。Wii時代のシンプルな形とは違い、WiiUのコントローラには、多彩なボタンやスライドパッド、タッチペンと、ゲームを楽しくするための機能を可能なかぎり詰め込んだ。