窮地に立つ任天堂 「Wii U」で見せる執念

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 しかし足元では、Wiiのスリープユーザー(持っているのに遊んでいない人)が急増している。特に深刻なのは国内だ。今年1月時点で、国内のWiiユーザーは半年前と比べ、200万人も減った。「次に遊びたい一本が見つからない」、というのが主な理由といえる。

Wiiソフトの中で、任天堂製ソフトの販売累計本数に占める割合は7割強と、圧倒的に高い(エンターブレイン調べ)。任天堂の据置機では任天堂のソフトしか売れない--。こうした懸念が現実となり、ソフトメーカーは資源を他社製ハードへシフトさせた。

Wiiの国内販売タイトル数は、08年の133本をピークに、09年は116本、10年は81本と急減。魅力的なソフトが少ないのでハードが売れず、ハードが売れないのでさらにソフト開発が進まない、という悪循環を生んだのだ。

岩田社長自身、こう打ち明ける。「Wiiの普及初期には悪い意味での自前主義に陥った。その時点で社外(のソフトメーカー)ともうまく連携できていれば、Wiiの将来はもっと違うものになったのではないか、という思いを正直抱いている」。任天堂を1兆円企業に押し上げたDSとWiiの余韻は、今やさほど残っていないのが現実だ。

模索を続ける任天堂をしり目に、ライバルたちも黙ってはいない。E3では競合する2大据置型ゲーム機の方向性も大々的に示された。

ライバルたちも猛追 超えるべき2つの壁

より高精細なグラフィックで上級者の支持を得てきたのが、SCEの「プレイステーション3(PS3)」だ。WiiUのグラフィック性能はやっとPS3並みに追いついたばかり。SCEは新しいPSVitaとの互換性を生かし、既存のファンを囲い込む作戦に出るに違いない。

またPS3より脅威になるかもしれないのは、米マイクロソフトの「Xbox360」か。これまで3番手に甘んじてきたXbox360は、初心者層の獲得でシェアを拡大させようと躍起になっている。10年11月に発売したコントローラ不要の体感型ゲームシステム「キネクト」が牽引役だ。日本ではなじみの薄いキネクトだが、米国では10年の年末商戦でブレイクし、世界では発売後4カ月で1000万台を突破した。身体の動きや音声を認識する技術により、ダンスや球技などで誰もが直感的に遊べる点が好評を得ている。

「今後は家族で遊べるタイトルを強化する。今年の年末商戦では日米欧3極で販売台数トップを目指したい」(泉水敬・日本マイクロソフト執行役常務)。WiiUの攻勢がかかる前に、なるべく多くの顧客を獲得したい思惑もありそうだ。

いずれにせよ任天堂を取り巻く環境は、年々厳しさを増す一方だ。

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