窮地に立つ任天堂 「Wii U」で見せる執念
任天堂はまだ全容を明らかにしていないが、ネットワークとの連携強化も売りになりそうだ。たとえば、日々新しいコンテンツが配信されたり、友人からのメールが届くような仕組み。「携帯電話の画面を無意識にチェックするように、WiiUのコントローラの画面を無意識に見てしまうような仕組みを作り出すのではないか」と、岡三証券の森田正司アナリストは予想している。
E3会場の体験ブースには業界関係者が殺到。「6時間待ち」の列が閉鎖されてからも、体験者の周囲には何重もの人だかりができていた。
が、ロサンゼルスの熱気は、海の向こうには届かなかった。
WiiUの発表当日(日本時間8日)から、東京証券取引所の任天堂株には早くも見切り売りが進行。10日には1万5770円と年初来安値を更新し、WiiUへの当初の反応は空振りに終わったのである。
間の悪いことに、携帯型でも、競合するソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)によって、新製品「PSVita(ヴィータ)」(年末発売予定)で価格攻勢をかけられた。「機能からして5万円でもおかしくない」(業界関係者)はずのVitaだが、任天堂の携帯型「ニンテンドー3DS」(今年2月発売)の2万5000円を意識し、価格をピタリそろえてきたからだ。
ゲーム界の雄である任天堂だが、売上高が1兆円を超えたのはここ4~5年のことである。携帯型のDSと据置型のWii、二つのハードが同時に花開いた09年3月期に、5553億円と過去最高営業益を記録。しかしその後どちらも“旬”が終わったうえ、円高の影響も重なり、前11年3月期の営業利益は1711億円まで落ち込んだ(下図)。裸眼立体視がセールスポイントの3DSも、震災の影響に加えて、潜在需要の掘り起こしに苦戦しており、現時点では期待したほどの成果を挙げられていない。