「ポスト合弁時代」で岐路に立つ日本車メーカー ガソリン車時代に築いた地位ではもう戦えない

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かかるなか、日系各社は派遣従業員の削減による生産調整、ディーラーの在庫圧力の緩和、輸出拠点化など、市場環境に適した運営や構造改革に取り組んでいる。

トヨタは、2023年7月に広汽トヨタ(広州汽車との合弁)で約1000人の従業員を削減し、ホンダでも11月に広汽ホンダの従業員約900人を削減した。また、工場の稼働率を維持するため、中国製BEVを海外に輸出する動きも出てきている。

主要乗用車メーカーの工場稼働率

輸出を目論むもテスラや中国車に太刀打ちできず

東風ホンダは、2023年4月に新型BEV「e:NS1」、6月に「CR-V e:HEV」を発表し、ヨーロッパへも輸出。11月には、タイやアメリカに中国製電動車部品も輸出し始めた。また、東風日産は11月に新事業戦略を発表し、2025年から中国製電動車を輸出開始し、年間10万台を目指す。

一方、日本勢もBEVを投入して巻き返しを図っているが、現状は価格競争力が弱く、走行性能や走行フィーリングでも、アメリカ・テスラや中国新興勢に太刀打ちできない状況だ。日系BEVの中国販売台数は、2023年に約8万台となると見られるが、日本車の中国販売に占める割合は2%に過ぎない。 

広汽トヨタが広州モーターショー2023で発表した、鉑智4X(筆者撮影)
広汽トヨタが広州モーターショー2023で発表した、鉑智4X(筆者撮影)

また、BYDを筆頭とする中国勢プラグインハイブリッド(PHEV)の価格破壊が、日本車の競争力を一気に脅かしている。

日系自動車大手は、コストダウンとブランド力の維持を意識しながら、ガソリン車市場で残存者利益の獲得に注力。動力源で差別化を図ってきたユニークなガソリン車ブランドにとっては、厳しい争いが迫られている。

三菱自動車は2023年10月、保有する広汽三菱汽車の株式を1元の対価で、中国合弁相手広州汽車集団に譲渡し、中国撤退を余儀なくされた。2018年にスズキが譲渡した「長安スズキ」(スズキと長安汽車の合弁)に続き、「乗用車事業1元」の日系第2号になった。

年間20万台の生産能力を持つ三菱自動車の長沙工場は、約3000人の従業員を抱えている。「無償の形で工場を譲渡し、今後広州Aions(広州汽車のBEV子会社)のBEV生産に転用できれば、地域雇用への影響を最小限に抑える」と地場自動車メーカーの幹部が指摘した。

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