ロス続出?「セクシー田中さん」結構ヒットした訳 令和のドラマらしい「穏やかさ」が安眠導入剤に

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一方、田中さんは、憧れの三好にも好意を持たれ、キスまで進みそうになるが、笙野のことがちらついて……。別居中とはいえ妻がいるらしいのに、田中さんに「キスしていい? 嫌?」と甘い言葉をささやく三好がこのドラマで最も「セクシー」であるという声もSNSでは飛び交った。ともあれ、別居中の妻がいるらしいことが問われないほど、魅力的であることは、ひとえに安田顕の演技力の賜物であろう。

ここで改めて、田中さんの考える「他者の意見をはねのけて強くありたいか。すべてを内包してやわく共存したいか」が筆者には思い出された。自分らしく自由に生きたい。他者の目を気にせず、自分で選び取った道を邁進したい。とはいえまったくの孤独はさみしいもので、やっぱり誰かと共存したい。

漫画はまだ続いている中での結末は?

田中さんが踊っている、ペルシャ料理店Sabalanはゆるやかに人とつながれる理想の空間であり、ベリーダンスを通じて、田中さんも、ほかの人たちも、自分の意思と他者との共存という難問に向き合っているのだろう。

第9話の状況を見るに、田中さんと笙野は結ばれて然るべきではないかと思うが、旧時代のドラマだったらそうなるであろうところ、友情のままでいてほしいという声も少なくない。これがまた令和のドラマの面白いところだ。

『セクシー田中さん』は漫画が原作で、この漫画がまだ完結していないので、ドラマオリジナルのラストになるだろう。完結していない漫画のドラマ化の結末は大抵悩ましいものではあるが、『田中さん』に限っては、最終回前の第9回と最終回の脚本を、原作者・芦原妃名子自らが手掛けているので間違いないだろう。原作者自ら脚本を書くドラマはあまりないので、それも注目ポイントである。

ドラマのなかには、さんざん期待させてがっかり最終回というものもある。が、『田中さん』に限ってはそんなことはないと思いたい。ぜひともナットクの最終回で、田中さんロスにさせてほしい。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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