東急「ホテルのサブスク」発端は新幹線通勤だった 一見コロナ禍の空室対策、実は発想は以前から
鉄道をはじめ、コロナ禍で利用者の減少など大きな影響を受けた業種は数多い。鉄道会社の系列も多いホテルはその1つだ。コロナの5類移行による訪日外国人観光客の増加などの追い風を受けて現在は活況を呈しているが、この数年は「冬の時代」が続いた。
そのさなかの2021年4月に東急が始めたのが、ホテルのサブスクリプションサービス「TsugiTsugi(ツギツギ)」だ。期間内に2泊・5泊・14泊や、30日間連続など複数のプランがあり、全国約130(2023年12月時点)のホテルに宿泊できる。当初は実証実験として開始し、2023年5月に正式事業化。9月には西日本鉄道(福岡県)グループの西鉄ホテルズと提携するなど対象施設を増やしている。
苦境に陥ったホテルの空室対策として考えられたかのように見えるこの事業。実はコロナ禍よりもだいぶ前、「新幹線で遠距離通勤」が構想の発端だった。
渋谷まで月15万円で通える街は
「東京生まれ東京育ちなので『いなか』がない。地方にずっと憧れのようなものがあった」。ツギツギの発案者で代表を務める川元一峰氏はこう語る。川元氏は2011年に東京急行電鉄(現・東急)に入社。最初からホテル事業に関心があったわけではなかったという。
現在のツギツギにつながるアイデアの発端となったのは、2016年度の税制改正だ。会社が個人に支給する交通費の非課税上限額が15万円に拡大されるという内容を見て、川元氏は「渋谷から月15万円で通勤できる地方都市」を調べた。適していたのが、北陸新幹線が通る上田(長野県)だ。
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