東急「ホテルのサブスク」発端は新幹線通勤だった 一見コロナ禍の空室対策、実は発想は以前から

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座席にコンセントを装備した北陸新幹線なら車内で仕事もでき、通勤は可能と考えた川元氏。実際に住んでみることも考えたという。だが、「賃貸物件があまりなく、地縁もないので購入するのも踏ん切りがつかなかった」。そこで浮かんだのが、地方に“お試し移住”ができる仕組みをビジネス化することだ。当時は現在のようなテレワークの発想はまだ浸透しておらず、あくまで東京圏に通勤するという考え方だった。

長野県の上田駅
長野県の上田駅。北陸新幹線で東京まで1時間半程度の距離だ(記者撮影)

川元氏は2017年にこの案を、社内で新規事業の立ち上げを提案できる社内起業家育成制度に応募。だが、この提案は「交通費の課税額が15万円になっても、会社が実際に認める額は違うのではないか」「マネタイズは難しいのでは」などの指摘を受けて落選した。

その後も業務外でアイデアを練り続けていた川元氏が、現在につながる「サブスクリプション」のビジネスモデルに触れたのは、2018年にグループのケーブルテレビ会社イッツコムに異動した際だったという。ネットフリックスなど月額制動画配信サービスの普及でケーブルテレビ局が変化を求められる中、事業構造改革を担当することになった川元氏は月額課金制のビジネスモデルを研究。「せっかく身に付けた武器なので、これを自分のアイデアに生かせないか」と考えた。

ケーブルテレビとホテルの経験

サブスクのビジネスモデルを学んだ川元氏が次に発想したのは、当初の案とは違う「空き家」を使った住み放題サービスだった。「空き家処分に悩んでいる人は多いし、社会問題の解決にもなるんじゃないかと」。2018年、再び社内の育成制度に応募すると、今回は1次選考を通過した。

川本氏
ツギツギの発案者で代表を務める川元一峰氏(記者撮影)

ただ、空き家の所有者や問題に取り組むNPO団体などに話を聞くと、実情は予想と異なっていた。「所有者に本音を聞くと、処分はしたいと思ってはいるものの面倒でやりたくないという声が多い。NPOにも『民間でそう簡単にマネタイズはできない』と指摘された」。また、空き家は耐震基準を満たさない建物が多く、住み放題サービスのために補強まで行うのは難しかった。

空き家の活用は困難と考えた川元氏が次に思い付いたのは「稼働率の低い社宅を使うこと」だ。実際にそのような社宅を保有する企業とも話し合い、社宅を保有していないベンチャー企業などに対するシェアサービスなども構想したが、「そもそも僕がやりたかったこととはどんどん離れてきてしまった」。それまで考えてきたアイデアがいったん暗礁に乗り上げたところ、新たな展開につながったのは2020年の東急ホテルズ(現・東急ホテルズ&リゾーツ)への異動だった。

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