「テスラ」にはあって日本企業に欠けているもの なぜ日本は世界からこんなに遅れてしまったか
「日本ではイノベーションが起こらない」といわれて久しい。日本が先端分野から後れをとる背景には、性能や品質を上げることを重視しすぎる経営思想があると、ソフトバンク社外取締役で、AIの第一人者でもある東京大学の松尾豊教授は指摘する。
本稿では、理系分野で活躍する東大教授10人が、ビジネスやIT、国家、AIなどについてトークを繰り広げる『東大教授が語り合う 10の未来予測』から、日本が世界に後れをとっている原因を探る。
PDCAのサイクルが加速している
松尾豊(自動運転を研究、以下、松尾):これは、僕が最近いろんなところで使っている複利計算の式です。「a」が元本、「r」が利率、「t」が運用期間だとします。
普通、みんな「r」を大きくしようとするんです。利回りのいい金融商品を買いたいし、新製品を売るために性能を上げるわけです。でも、こうやってrを高くしようとするのは従来型で、最近はこの「t」を大きくすることができるようになってきたんです。
「t」は「○○年後」ということなので、大きくするには、これまで「待つ」ことしかできませんでした。ですが近年、デジタル化が進んでPDCA(P= PLAN/計画、D= Do/実行、C= Check/評価、A= Action/改善)のサイクルがめちゃくちゃ加速しているんです。
GAFAなどは「ABテスト」を何万回と試して、いい方を取ることが可能になってきた。これは実質的に「t」を大きくしているのと同じことです。世界ではすでに「t」を大きくする戦いが始まっています。にもかかわらず、日本ではいまだに「r」を大きくすることに注力している。
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