《日本激震!私の提言》復興は持続可能性を考え「スマートシュリンク」で--林良嗣・名古屋大学教授
すなわち、コンパクトに凝集した集落を形成し、住民同士あるいは近隣の集落同士が連携して、共助することである。これにより、自然の猛威に対して、インフラの要塞化による緩和策から、地域のコミュニティ力の引き上げによる適応策へ移行する事が容易になる。
住み慣れた土地に愛着を持つ現世代には酷かもしれないが、極端な高齢化が進み、もはや経済が成長しない厳しい時代を生きていかねばならない孫の世代のことを考え、居住と産業それぞれにとって、よりふさわしい適地を探すべきだ。漁業もその点で例外でなく、職住分離の工夫が必要なのだ。これまでと同じ場所に漁業の町を再建し、再び自然の波にのまれるようなことがあれば、東北の文化だけでなく、日本の文化でさえも希薄になってしまう。
核家族化して家族が細切れになり、自動車の普及により都市も農村も拡散して、インフラ整備のコストは膨らみ、一方で社会は脆弱になった。災害に弱い土地にも住宅地が広がり、バラバラに建てられる建物が近隣の居住環境を悪化させ続けている。もはや日本の都市は持続的とはいえない。大災害は日本の社会システムに対する警告であり、少子高齢化と経済の潜在成長力低下のスピードを考えれば、今が変革のラストチャンスととらえるべきだ。
今回の大震災では多額の公的な復興資金が投入されることになる。多くの犠牲を出した事を教訓として生かすには、この資金を最大限に有効利用して、一時的撤退→復旧→スマートシュリンクという戦略を他地域に先駆けて実行し、孫の世代には、東北地方が最も持続可能でQOLの高い地域になっていればと思う。
はやし・よしつぐ
1951年生まれ。79年東京大学大学院博士課程修了。92年名古屋大学教授、同大学で2006年環境学研究科長を経て、09年交通・都市国際研究センター長、「少子高齢時代の都市・農村のスマートシュリンク」研究を推進し、世界交通学会学術委員長、国土および環境など国の審議会各種委員も務める。
(週刊東洋経済2011年4月16日号掲載 記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら