意外と知らない「水の色は透明?青?」への答え  世の中の土台を構成する「化学」という教養

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普通の氷は、水分子が水素結合で結びついて結晶になっており、この結晶を上から見ると、水分子は六角形の形に並んでいます。雪の結晶もこの構造の集まりですから六角形になります。水素結合のせいで氷は隙間が大きいのです。

液体の水になると水素結合がかなり切れて、水分子が乱雑に動き回るようになります。水素結合がなくなると、水分子間の隙間が埋まって密度は大きくなります。

水はどんなものでも溶かすのか?

水にいろいろな物質を入れてかき混ぜてみましょう。ショ糖(砂糖の主成分)を入れたときは、ショ糖の姿は見えなくなり、無色透明の液体になります。このとき「ショ糖は水に溶けた」といいます。

馬鈴薯デンプンを入れると、水は白くにごります。そしてしばらくすると、デンプンが底に沈澱してきます。

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水に物質を入れたとき、浮いたままだったり、沈澱したり、水がにごったりしている場合は、その物質は水に溶けていないのです。

水は、物質を溶かす能力が大きいです。

雨は、大気中の気体を溶かし込んでいます。川の水は、いろいろな物質を溶かし込みながら海へと流れていきます。海水中には、1リットルあたり約35グラムの塩類が溶けています。金や銀はおろかウランまで、60種以上の元素が溶けています。

私たちの体に目を向けてみましょう。

私たちが食べ物を食べると、それに含まれるデンプン、タンパク質、脂肪は、胃や腸で消化・吸収されて水に溶けるようになります。水に溶けるようになった栄養分は、体内に吸収され、血液の流れに乗って、体のすみずみの細胞まで運ばれます。老廃物もまた、水に溶けて尿や汗などとして体の外へ運び出されます。

灯油やガソリン、食用油、脂肪など、有機化合物(炭素を中心にした化合物)は一般に、水に溶けにくいものが多いです。それでも全く溶けないわけではありません。

灯油やガソリン、食用油、脂肪なども、わずかですが水に溶けます。

油の仲間どうしは、よく溶け合います。だから水では消えない油性インクの落書きは、アセトンや石油ベンジンなどの有機溶剤で消すことができます。

有機化合物の中でも、エタノールやショ糖などは水によく溶けます。エタノールは水にどんな割合でも溶けますし、ショ糖は20℃で、水100グラムに204グラムも溶けます。これは、それらの分子中に水と仲のいい部分(親水基の-OH〔ヒドロキシ基〕)を持っているからです。

水は、塩類や親水基を持った親水性の物質だけでなく、溶ける量は少なくても、きわめて多種類の物質を溶かします。水にはガラスも溶けるのです。

左巻 健男 東京大学非常勤講師。元法政大学教授、『RikaTan(理科の探検)』誌編集長

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さまき たけお / Takeo Samaki

東京大学教育学部附属中・高等学校、京都工芸繊維大学、同志社女子大学、法政大学教職課程センター教授などを経て現職。共著書に『身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本』(明日香出版社)、
著書に『暮らしのなかのニセ科学』『学校に入り込むニセ科学』(平凡社新書)、『面白くて眠れなくなる人類進化』(PHP研究所)など。

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