中国で「複数の呼吸器疾患」が"同時流行"の深刻度 子どもから全世代、中国全土に感染が広がる

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患者が急増した都市では、小児科がほかの診療科から応援を要請したり、救急病院で診察が10時間待ちになるなど、医療の逼迫が顕在化している。

北京市の保険当局は小児科の診療体制やオンライン診療を拡充したうえで、小児科専門医を受診する前に近所の医院に相談することを呼びかけ、患者の分散に腐心している。

中国 呼吸器疾患 子供
診察を待つ病院内の様子(写真:CFoto/アフロ)

マイコプラズマ肺炎だけでなくさまざまな感染症が同時に流行しているが、12月初旬時点で猛威を振るっているのはインフルエンザだという。

国家衛生健康委員会の11月26日の会見での説明によると、1歳から4歳では「ライノウイルス(鼻かぜ)」、5歳から14歳では発熱やせきなどの症状が特徴の「マイコプラズマ肺炎」と、高熱、喉の腫れや痛みを引き起こす「アデノウイルス」、15歳から59歳ではライノウイルスと新型コロナウイルス、60歳以上は気管支炎や肺炎を引き起こすヒトメタニューモウイルス、風邪の病原体であるコロナウイルスの感染が多く、インフルエンザは全世代で流行している。

ゼロコロナ政策が影響

複数の感染症が同時に広がり、中でもマイコプラズマ肺炎とインフルエンザの感染者は記録的な多さだという。中国当局や専門家はその理由に3年に及ぶゼロコロナ政策を挙げる。

2020年1月に武漢で新型コロナウイルスの感染爆発が確認されて以降、中国は2022年12月まで人の行動や経済活動を制限して感染を徹底的に封じ込めるゼロコロナ政策を続けてきた。

その結果、ほかの感染症も封じ込められていたが、今年に入って人の動きが元に戻るにつれ、ウイルスも活発に動き出した。また、ウイルスとの共存を徹底拒否した3年間で人々の免疫力が低下し、より感染しやすくなっているというわけだ。

インフルエンザは今年3月にも流行し、「季節外れ」と話題になった。通常は秋の初めから冬にかけて広がるが、ゼロコロナの影響で周期が乱れており、人の免疫力が低下していることも相まって、前回の流行から半年余りで再び流行のフェーズに入ったと専門家は説明する。

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