「バス運転士不足で鉄道が重要に」有識者が指摘 北海道新幹線「並行在来線」廃止は再検討が必要
――北陸鉄道石川線のケースではクロスセクター効果分析と同時に費用便益分析(B/C)も行われました。
はい。鉄道の効果はクロスセクターでみた財政支出面だけではなく、鉄道がもたらす社会的便益を考えなければいけません。鉄道に投資する場合(with)と鉄道に投資をしない場合(without)の相対的な効果をみるために、費用便益分析が行われます。その際の評価項目は、主なものとして、鉄道が走る場合の時間短縮効果、既存の鉄道を廃止する場合はバスに転換した場合の所要時間の増加は便益の損失となります。
そのほか、二酸化炭素排出量などの環境面での影響、交通事故の発生にかかる影響なども算出されます。費用便益分析では、社会的便益(B:Benefit)と社会的に費用(C:Cost)を比較し、その比率B/Cが1.0を上回るか否かに注目する人がいますが、費用便益分析は、あくまで相対的な費用対効果を測る手法であり、B/Cは1つの参照基準ですが、絶対的なものではありません。国土交通省のマニュアルでは、鉄道プロジェクトについて以下のように明記されています。
すでに決まったことでも再検討は必要だ
――北海道新幹線の並行在来線問題では、輸送密度が2000人を超える余市―小樽間も含めて廃止の方針が結論付けられましたが、この区間の鉄道を廃止してしまえば道路事情は悪化しかねませんね。
北海道新幹線の並行在来線を取り巻く状況は廃止の方針を決めた2022年3月から大きく状況が変化しています。バスドライバー不足が深刻化し、鉄道の代替輸送をバスで容易に担える時代ではなくなったこと、北海道新幹線の札幌延伸開業が大幅に遅れる見込みとなったこと、地域公共交通活性化再生法の改正により社会資本整備総合交付金に鉄道の再構築事業が加わったことが挙げられます。
「事情変更の原則」という言葉があります。契約の前提となった事情がその後、大きく変化した場合、契約の解除や改定を定めるという法律用語ですが、これだけ社会環境が大きく変化している中では、「決まったこと」であっても、改めて再検討するということは必要です。
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