「バス運転士不足で鉄道が重要に」有識者が指摘 北海道新幹線「並行在来線」廃止は再検討が必要
――地方鉄道の価値はどのように評価されるべきでしょうか。
昨年の国土交通省の検討会で書かれているとおり、まず「鉄道は、大量輸送、速達性及び定時性に優れていること」は確かです。
また、環境効率のよい交通機関であることから、欧州を中心に、昨今の脱炭素対策に向けて地方圏においても鉄道の評価が高まっています。
――環境効率とは具体的にどういったことなのでしょうか。
旅客の視点からは、自家用車やバスと比較して圧倒的に少ないエネルギーと労力で、輸送ができるということになります。例えば、150人の乗客を運ぼうとした場合、自家用車では150台、バスでは3台が必要になりますが、鉄道の場合は1両での輸送が可能です。
輸送密度220人以上なら鉄道のほうが環境効率がよい
――先の大量輸送という特性からいうと、地方鉄道線においては燃費の悪いディーゼル車をガラガラで走らせるよりもバスにしたほうが環境にいいという指摘があります。
交通安全環境研究所の1つの試算では、対地方近郊バスで、鉄道が1両当たり1日キロ当たり22人運べば、バスよりもエネルギー効率が高いとあります。つまり、1両で1日10本運行する路線であれば、輸送密度が220人を超えれば、バスよりも鉄道のほうがエネルギー効率がよいという試算ができます。
――とはいえ、輸送密度が1000人を下回るようでは、それ以外のコストも考え、国はバス転換も含めた存廃を考えるという方針のようですが。
まず、国の検討会は、別に1000人未満であるから、鉄道の特性が発揮できないとは言っていません。昨年の報告書では、ただし書きとして、「鉄道が各地域で果たしている意義・役割はさまざまであり、個々の線区を評価するに当たっては、あくまでも利用者や地域戦略の視点に立って、あるべき公共交通はどのようなものか、という視点から評価すべきである」と書かれています。また、現時点で輸送密度が1000人を下回る路線は、すでに列車本数は少なく、サービス水準がかなり低下しており、事実上、「使いたくても使えない」路線となっているところが多いことも事実です。
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