「ダンバー数」を超える共同体、カギの1つは宗教 『宗教の起源』など書評4冊

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ブックレビュー『今週の4冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』

・『歴史文化ライブラリー575 賃金の日本史 仕事と暮らしの一五〇〇年』

・『めくるめく数学。 女性数学者たちが語るうるわしき数学の物語』

・『トヨトミの世襲 小説・巨大自動車企業』

『宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』ロビン・ダンバー 著
『宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』ロビン・ダンバー 著/長谷川眞理子 解説/小田 哲 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・早稲田大学教授 柿沼陽平

人間が真に親密性を感じ、相手の顔を思い浮かべ、経験を共にするような人々の集団規模はおおむね150人まで。どれほどSNSで他人とつながっていても、核となる150人以外は、せいぜい顔見知りか、連絡先を交換したことがあるくらい。なぜなら人間の脳の新皮質の大きさをみると、人間の処理できる社会情報量には限界があるからだ。

この衝撃的な結果を導き出したのが著者だ。この業績によって、彼は霊長類の行動に関する世界的権威となった。また150人という数値は、その名を冠して「ダンバー数」と呼ばれている。

「ダンバー数」の提案者が信者集団という結びつきに斬り込む

では現代人がダンバー数を超える共同体を形成している背景には何があるのか。本書はこの問題に取り組み、カギの1つは宗教にあると説く。

だが問題はそれで終わらない。なぜ人間はかくも宗教を信じ、なぜ宗教はこんなにも多く並存しているのか。著者は教義主体の啓示宗教以外にも留目しつつ、神学とも歴史学とも別の手法をとる。

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