[Book Review 今週のラインナップ]
・『宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』
・『歴史文化ライブラリー575 賃金の日本史 仕事と暮らしの一五〇〇年』
・『めくるめく数学。 女性数学者たちが語るうるわしき数学の物語』
・『トヨトミの世襲 小説・巨大自動車企業』
評者・早稲田大学教授 柿沼陽平
人間が真に親密性を感じ、相手の顔を思い浮かべ、経験を共にするような人々の集団規模はおおむね150人まで。どれほどSNSで他人とつながっていても、核となる150人以外は、せいぜい顔見知りか、連絡先を交換したことがあるくらい。なぜなら人間の脳の新皮質の大きさをみると、人間の処理できる社会情報量には限界があるからだ。
この衝撃的な結果を導き出したのが著者だ。この業績によって、彼は霊長類の行動に関する世界的権威となった。また150人という数値は、その名を冠して「ダンバー数」と呼ばれている。
「ダンバー数」の提案者が信者集団という結びつきに斬り込む
では現代人がダンバー数を超える共同体を形成している背景には何があるのか。本書はこの問題に取り組み、カギの1つは宗教にあると説く。
だが問題はそれで終わらない。なぜ人間はかくも宗教を信じ、なぜ宗教はこんなにも多く並存しているのか。著者は教義主体の啓示宗教以外にも留目しつつ、神学とも歴史学とも別の手法をとる。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら