[Book Review 今週のラインナップ]
・『The Power Law(ザ・パワー・ロー) ベンチャーキャピタルが変える世界 (上・下)』
・『遺伝と平等 人生の成り行きは変えられる』
・『ろくでもない英語の言い訳300』
評者・経営共創基盤共同経営者 塩野 誠
ベンチャー関連業務に関わるならば必読の歴史書である。GAFAMを生んだ米国にあり、日本になかったのがベンチャーキャピタル(VC)だった。
しかし近年、多くの日本企業がコーポレートVC(社外ベンチャー企業への出資・支援活動組織)を持つようになっている。VCの本質を再確認すべき頃合いだろう。著者は『エコノミスト』東京支局長として日本で暮らした経験を持つ日本通でもある。
なぜイノベーションは日本でもボストンでもなく、米国西海岸のシリコンバレーで起きたのか。日本のモデルは経済発展のキャッチアップ段階ではうまく機能したが、その後、最先端のテクノロジー・科学がより重要となる今のような社会には不向きだったと著者は断言する。一方、シリコンバレーは科学とエンジニアリングを企業収益に転換することに長けていた。
何がその優位性をつくったのか。本書は、世界中から起業家を引き寄せるシリコンバレーの文化を醸成した、VCの思考パターンを詳述する。
VCはマインドセットであり哲学 ベンチャー関係者必読の歴史書
VCは投資額の10倍以上のリターンを望む。彼らにとってはその規模の成功でなければ「ギャンブル」の意味はなく、そして時に千倍以上のリターンをも手にする。登場するVCは資金を分散せず、集中的に賭ける投資手法を選択する。VCの歴史上、約30年の運用期間で全体の5%のファンドが60%のリターンを稼いだのだという。
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