息の詰まる職場・職場の閉塞感はどこからやってくるのか?(第2回)--就職氷河期世代の閉塞感
伊川はかつて金融業界を目指していた学生時代の自分を思い出していた。今となってはなぜ自分が金融機関に行きたかったのか思い出せなかったし、それが本当に正解だったかどうかもわからなかった。ただ一つ、強くこみ上げてきたのは「どこかで道を誤っていなければもっと違う人生があったはずではないか」というどうしようもない思いであった。
引き返すことはもはやできない
伊川の職業人生にとって第一のチェインジングレーン(車線変更)は、最初の就職活動である。同期との「内定格差」にプライドを打ちのめされ、自分の志望や大学時代の専門と異なる会社を選ばざるを得なかった伊川は、「どこでも通用するような専門性を高めなければならない」という意識に強くとらわれるようになった。
第二のチェインジングレーンのチャンスは、転職市場が活性化し始めた5~7年目に訪れる。エンジニアとして明確な成長目標を持っていた彼の同期は、キャリアアップのために次々に転職していったが、SEの仕事を面白く感じ始めていた伊川は何となく出遅れてしまった。
第三のチェインジングレーンは「マネジメントコース」と「スペシャリストコース」の選択である。伊川はスペシャリストコースを選択したが、その先に待ち受ける道は暗く険しく厳しい。伊川としては専門職の道を走っているつもりが、管理職でもなく専門職でもない、道なき道をすでに走り始めているのかもしれない。「この道の先にもはや目指すゴールは存在しないのではないか」という不安と恐怖を感じながらも、伊川が引き返すことはもはやできない。
次回も引き続き、他の世代の閉塞感の実態とその背景を見ていきたい。
桐ヶ谷 優 クレイア・コンサルティング株式会社 ディレクター
慶應義塾大学文学部卒。大手人材ビジネス企業および外資系IT企業の人事部門を経て現職。M&Aに伴う人事制度統合、ベンチャー企業の人事制度設計・導入支援等を手がける。また、中間管理職や若手社員を対象とした研修講師の経験も豊富に持つ。
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