薬の保険適用で変わる「肥満は自己責任」の考え方 運動や食事でもやせられない「病気」という認識

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糖尿病の治療を目的として、オゼンピックという商品名の注射剤、リベルサスという商品名の経口剤が、ノボ社より販売され、わが国でも日常診療で使用され、健康保険が使える。ノボ社以外にも、イギリスのアストラゼネカ、フランスのサノフィ、アメリカのイーライリリーなどが同様の薬を開発・販売し、日本以外の国々では使用されている。

いずれも長い使用歴があるもので、服用者の3~4割の患者に悪心や下痢などの消化器症状を起こすが、多くは我慢できる範囲で、基本的に安全であることがわかっている。今回、わが国で承認されたセマグルチドも大きな問題を起こす可能性は低い。

世界では続々と新薬が誕生

世界中で肥満が問題になっている昨今、製薬企業にとって肥満治療薬は有望な市場であり、実際、世界中の製薬企業が開発に参入した。そして、続々と新薬が誕生し、新たな研究成果が報告されている。

例えば今年7月、イーライリリーは同社が販売するチルゼパチド(商品名:マンジャロ)を投与した肥満症患者の体重が26%減少したという研究成果を発表した。セマグルチドをはるかにしのぐ効果である。

11月11日には、ノボ社が開発したセマグルチドを投与された患者は体重を9.3%減らすだけでなく、心筋梗塞や脳卒中の発症を20%減らしたという研究成果が、『ニューイングランドジャーナル』に発表された。

どうやら、肥満を解消するだけでなく、脳や心臓を守り、健康寿命も延長しそうだ。

さらに、今年5月にはノボ社がセマグルチド経口剤(リベルサス)を用いた臨床試験で、体重減少率が15.1%であったと報告した。これは注射剤(ウゴービ)と遜色ない成績である。経口剤は注射剤と比べて患者への負担が軽く、はるかに便利だ。早晩、わが国でも経口剤の使用が認められ、利用者は増えるだろう。

このような研究の進歩は、患者にとって素晴らしいことだ。それは、薬物治療は日常生活への制約が少ないからだ。

肥満をはじめ生活習慣病の治療の基本は、運動と食事である。ただ、それらを続けるのが難しい。

2019年4月、アメリカの研究チームは、セマグルチドなどと比べると作用は弱いが、体重減少効果が証明されているメトホルミンという経口薬と食事・運動療法の効果を比較した臨床試験の14年間のフォローアップの結果を、『アメリカ内科学会誌』に発表した。

この試験ではメトホルミン群の22%が体重減少を維持していたが、食事・運動療法群では5.9%だった。多くが途中で挫折したようだ。

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