陰謀論や「ディープ・ステイト」が流布する理由 ヤニス・バルファキスも指摘する「封建制」到来

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『新しい封建制がやってくる』の初版の序文でコトキンが書いているように、本書は右派のものでも左派のものでもないというのは、そこにこめられた現代社会分析という面に限れば、正しいと言える。

たとえば、英国で学位を取得したギリシアの経済学者であり、左派ポピュリズムに立脚した急進左派連合(シリザ)の政権で財務大臣を務めたヤニス・バルファキスもまた、2023年の今年、『テクノ封建制』という本を書き、コトキンときわめて近い指摘をしている。

プラットフォームやクラウドにアクセスできなければ、ビジネスや労働のスタートラインに立つこともできない現状は、封建領主に収穫物の一部を収めた農奴と変わらない立場に大多数の人びとを置いている。

バルファキスは、クラウド資本を支配する現代の封建領主たちと、かれらに服従するクラウド農奴たちの世界として現在の状況を描いている。

右派と左派のどちらにも失望

ただし、本書は右派のものでも左派のものでもないと語るコトキンは、右派と左派のどちらにもながらく失望を感じてきた。

既存のアメリカの政党政治への懐疑が、コトキンに本書のような考察を促してきたのも事実である。

1952年生まれのコトキンは2014年のあるインタビューのなかで、民主党を支持してきた自身の過去について触れている。1959年から1967年にかけて、のちに大統領となるロナルド・レーガンの前にカリフォルニア州知事を務め、州の近代化に力を尽くした民主党選出のパット・ブラウンが、いかに自分にとって偉大な知事であるかをコトキンは語っている。

しかしコトキンは同時に、現在の自分は政治的なホームを見失ってしまっていることも告白していた。コトキンは、社会的保守は自分としては好ましいと思わず、他方でリバタリアンはあまりにも思考が抽象的で、自分たちの言っていることが多くの人びとに及ぼす影響をわかっていないと述べた。

その一方で、カリフォルニア州の民主党が、ヒスパニックの州民の若い世代の社会的上昇をまったく顧慮していないことへの失望を隠さなかった。

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