菊地凛子は成り上がりの映画プロデューサー役として見た目からも台詞からも強烈な存在感を見せつけています。不倫旅行中の若手俳優(永山絢斗)との会話劇から千弦(宮﨑)と言い争う長台詞まで、至る場面で奇抜で横柄ながら、憎めない描き方です。
また名脇役としてブレーク中の岡部たかしはマジシャン役で登場し、ほかにも子役から大御所まで揃いに揃えています。全体的にキャラクターが物語を作る痛快さに満足できますが、2時間の尺の中でそれぞれのワケあり事情を語るには登場人物が少々多すぎます。詰め込んだ感があるのが勿体ない点です。
製作費は当初予算の倍以上
何よりこだわったのは、豪華客船という舞台なのかもしれません。作品として必要なものに投資を惜しまないNetflix作品ですから、製作費を抑えた会話劇に終わらせません。そもそも物語の舞台を「豪華客船」にすること自体、今の日本の映画会社やテレビ局がやろうとすると製作費の回収が見込めず実現しにくいものです。
実際プロダクションノートで坂元は「実は以前も船を舞台にした作品を提案したことがあったんですけど、その時はとにかくめちゃくちゃお金がかかると言われて」と明かしています。つまり構想として持ってはいたものの、製作費の面から断念せざるを得なかったことが読み取れます。ならば、なおさら形にしたいと、Netflixの岡野真紀子エグゼクティブプロデューサーが中心となって動き、当初は実在する世界最大級のマルタ船籍のクルーズ船「MSCベリッシマ」を使用した撮影許可を取り付けていたそうです。
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