坂元裕二とNetflix初タッグ「世界7位」で見えた事 吉沢亮と宮﨑あおい主演「クレイジークルーズ」

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話はこれで終わりません。2022年春のクランクイン直前にコロナ禍の影響で国際クルーズ船の国内入港が禁止されてしまう事態に陥ります。先が見通しにくいなか、Netflixは「それならば実寸大のセットを作ってしまおう」と思い切った決断をします。シーンが限られるリスクはありながらも、殺人現場と恋の始まりの舞台でもある作品を象徴するデッキプールをはじめ、スイートルームなどの巨大セットを一から建設していったそうです。

撮影時も抜かりありません。メインキャストだけでなく、エキストラにもシャネル、エルメス、グッチ、セリーヌ、ヴァレンティノといったハイブランドの衣装を用意し、パーティーシーンはスタイリストとメイクのスタッフだけで50人以上いたとか。この辺りもまた日本の映画やテレビの作品の場合、コストをできるだけ抑える傾向にありますが、グローバルプラットフォーム作品では細部にまでこだわり、ビジュアルを重視することは常識でもあります。

Netflix映画『クレイジークルーズ』の主な出演者。左から吉沢亮、吉田羊、宮﨑あおい、泉澤祐希、菊地凛子、蒔田彩珠、安田顕、高岡早紀(画像:Netflix)

気になる製作費ですが、岡野エグゼクティブプロデューサーが「セットを作ったことで最初の予定より倍のコストがかかってしまいました。でも、結果的に時間をかけて撮影することができて良かったと思っています。何より坂元さんの夢を叶えたいという思いで必死でした」と、充実度を優先していたことが印象的です。

次作は連続ドラマ?

反響も気になるところです。世界7位をマークした初週の公式非英語映画ランキングの中身をみると、日本では1位、香港、台湾、タイでTOP10入りしています。坂元作品ファンと出演者ファンが関心を持ち、アジア受けするロマンスものであることがこの結果に繋がっていると言えそうです。

一方で、坂元が脚本を手掛けた是枝裕和監督作の『怪物』が第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したことや代表作の1つドラマである『Mother』(日本テレビ)が世界各国でリメイクされていることから欧米や中東から反響があっても良さそうですが、現実的には会話劇が見どころですから、言語の壁もあり厳しそうです。

期待値が高い日本の坂元作品ファンに至っては、Netflixとのタッグでシリーズものを見てみたいという不満を残していそうです。たとえ完成度は変わらずとも、連続ドラマはより中毒性を作り出しやすく、30年以上にわたって日本のドラマ界を引っ張ってきた坂元と連続ドラマの相性の良さをファンは知っているのではないでしょうか。

坂元は5年にわたり、日本のNetflix合同会社と新作シリーズ・映画を複数製作し、独占配信していく契約を今年締結させています。さっそく具体的に計画が進んでいることもわかっています。つい先日の11月はじめに、脚本作りのために北海道まで足を運んだそうです。連続ドラマなのか、どんな内容になるのか発表が待たれます。

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長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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