吉沢亮と宮﨑あおいが物語の中心人物となって、豪華客船の証でもあるバトラー役を吉沢が、ワケあり理由で船に乗り込む女性を宮﨑が演じています。たまたま殺人現場に居合わせた2人が「なかったこと」にさせないよう、独自の捜査を始めていくうちに恋が生まれるという恋愛映画としてはお約束の展開でもあります。
どちらかというと、ミステリー考察をじっくり味わう類のものではなく、本音に行き着くまでの心情の移り変わりを楽しむ人間ドラマ要素の印象が強い作品です。捻りのきいた坂元作品らしさが表れているのは、「恋愛は誰もが主役になれるもの。だから恋愛って最高だよね」という込められたメッセージにあると思います。
見どころは会話劇と癖の強いキャラ
吉沢も宮﨑の役も揃って、実はモテるどころか恋人に浮気までされているという設定です。あえて脇役キャラクターを主役にすることで「誰もが主役になれること」を強調し、それを活かした会話劇が見どころとなっています。
たとえば、それぞれの恋人の浮気を巡って吉沢演じるバトラーの冲方が「“浮気した”も“(浮気)しかけた”も同じです」と言うのに対して、宮﨑演じる千弦が「“ご飯炊けた”と“炊けかけ”は違います。炊けかけじゃ食べれません」と反論するやり取りなんかがそうです。恋愛のごたごたを熱々のご飯に例えることが単純に可笑しくも、一方でその必死さが愛おしくも感じます。
脇を固める登場人物は癖の強いキャラクターばかりです。「彼は頼りがいがあるんじゃないよ。ただ、避雷針として優秀なだけ」と、バトラーの冲方(吉沢)を一言で言い表すうえに自身の個性もにじみ出る船長役を吉田羊が演じ、またガウン姿で富裕層役を滑稽に見せる安田顕の演技はコメディ作品に欠かせません。
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