【産業天気図・自動車】震災影響による生産停滞は夏に全面解消、後半景況感はV字回復へ
11年4月~11年9月 | 11年10月~12年3月 |
自動車業界の景況感は2011年4~9月(前半)が下向きながら、10月~12年3月(後半)が上向きへV字回復しそうだ。東日本大震災に伴う部品不足が大きな打撃となった自動車業界だが、サプライチェーン(部品供給網)の復旧度合いによって、上期・下期の状況が大きく左右される見通し。
サプライチェーンの復旧は想定以上の早さで進んでいる。トヨタ自動車の国内工場の稼働率は、4~5月当初計画比約5割だったが、6月には9割近い水準まで戻す見通し。8月には当初計画とほぼ同水準となる。電力供給の不安が和らぐ10月以降は、前半の遅れを挽回するためさらに高い水準の生産が計画されている。海外工場も国内につれて正常稼働に戻る見通しで、11年度通期の生産台数(ダイハツ工業・日野自動車含む)は前年度実績(約717万台)を維持できる見通しだ。
日産自動車も6月の国内生産はほぼ正常稼働を想定する。日産・トヨタに比べ生産回復が遅れていたホンダも、ここにきて回復のピッチを早めており、今夏には国内外で正常稼働に戻る見通し。全体的に当初今秋と見込まれていた生産の正常化は、2カ月以上前倒しされるイメージだ。企業によっても異なるが、業界の生産台数は上期が前年同期比約20%減、下期が15~20%増で、通期では前期並みを維持できるとの見方が有力になっている。
ただ、利益面で上期の落ち込みをすべて挽回できるかは不透明だ。1ドル80円の円高水準を想定すると前期比で6円近い円高となり、各社の収益を圧迫する。トヨタでは1円の円高が営業利益に約300億円のマイナス要因となる。さらに上期は人的な余剰感がある中で下期の挽回生産に備える必要があり、労務費や開発費など固定費が重くのしかかる。震災からの復旧を最優先する中で、日系企業のお家芸である原価低減のスピードが鈍る可能性もある。11年度通期では売上高横ばい、営業減益が一つの方向感であろう。
なお、自動車各社は震災により今期の業績予想を未定としていたが、6月中旬には各社の予想が出揃う公算だ。
(並木 厚憲=東洋経済オンライン)
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