外国人が日本酒の「獺祭」こぞって買い求める背景 ニューヨーク・ヤンキースのスポンサーにも

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海外市場で戦ううえで、桜井氏は日本酒の魅力は3つあるという。それは、文化的、機能的、品質的な価値だ。日本酒が、米と水が豊かな日本で生まれ、祭りや冠婚葬祭の場で提供されてきたという文化。酔うことでリラックスすることができ、人との交流がスムーズになるという側面。そして、“おいしい”という品質的な価値だ。

「海外のジャーナリストから、酸がある日本酒を造った方が、料理とペアリングするといわれたことがあります。しかし、日本酒、少なくとも『獺祭』とワインでは同じ料理に対しても合わせ方が違います。

たとえば、ワインは料理の味わいを切る役割を果たしますが、日本酒は料理と混ざり合いながら一体となって消えていくものです。こういった意見が聞かれるのも、日本酒の魅力をまだ伝えきれていないからかもしれません。最高の日本酒を造って広めていきたいので、成功も失敗も含めて、みなさまに応援していただけると嬉しいです」(桜井氏)

競合や他ジャンルとの競争も激しい

桜井氏の志は大きいが、獺祭を広めていくうえで、何か課題はあるだろうか。私は3つのポイントがあると考えている。

1つ目はノンアルコールドリンクとの競争だ。コロナ禍でモクテルなどノンアルコールが躍進した。“お酒を飲めるがあえて飲まない”ソバーキュリアスも増えているだけに、ノンアルコールドリンクは強敵だ。お酒の素晴らしさ、「獺祭」のおいしさを伝えられるかがカギだ。

2つ目は桜井氏も言及したように外国人の理解だ。日本酒も料理とのペアリングにマッチすることを啓蒙していき、ファインダイニング(高級レストラン)での消費も伸ばす必要があるだろう。それには、世界各地で行っている「獺祭の会」の役割や「アジアのベストレストラン50」での存在感がますます重要となる。

そして最後は他の日本酒との競争。酒造メーカーはこれまで海外市場に消極的だったが、旭酒造の成功を目の当たりにして、海外に力を入れ始めている。

同じマーケットの中でシェアを奪い合うことになるが、日本酒市場が拡大していけば問題ない。それには、日本酒業界が一体となって、海外で訴求していくことが必要だ。

先に述べた海外で注力する「DASSAI BLUE」のコンセプトは「青は藍より出でて藍より青し」に由来しており、「日本で造られるオリジナルの獺祭を超える」という想いが込められている。桜井氏の想いを乗せた「獺祭」の佳味が世界を席巻する日を楽しみにしたい。

東龍 グルメジャーナリスト

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とうりゅう / Toryu

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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