カーブ克服して速度アップ「振り子式車両」の進化 新技術搭載の「やくも」は従来車とどう違う?
JR北海道の車体傾斜装置は先頭車に搭載したジャイロがヨーイング角速度と走行速度から曲線を検知すると、曲線外側の空気バネを持ち上げて車体を2度傾斜させる。パッシブ式ではあるが、先頭車から編成全体に車体傾斜を指令するので、傾斜遅れは最低限となっている。また、車両に線路マップが必要ないため初期投資の削減ができる。
ただ、現在はキハ201系・キハ261系共に車体傾斜装置の使用を停止しており、キハ261系は2013年以降、車体傾斜装置の搭載自体もやめている。
ロマンスカーや新幹線も採用
空気バネストローク式車体傾斜装置は私鉄でも採用された。名古屋鉄道は1600系での試験を経て2005年1月から営業運転を開始した空港特急2000系「ミュースカイ」で実用化した。名鉄の車体傾斜装置は日本車輌製造が開発したもので、外軌側の空気バネに給気すると同時に内軌側の空気バネから排気して、車体を2度傾斜させる仕組みだ。なお、車体傾斜装置は常滑線内で動作させている。
小田急電鉄も2005年3月にデビューしたロマンスカー50000形VSEに車体傾斜装置を搭載している。VSEは連接構造で、空気バネが高い位置にあるのが特徴。車体傾斜角度は連接台車が2度、先頭台車が1.8度。曲線通過速度を向上させない代わりに遠心力を0.08Gから0.046Gに低減させて乗り心地の向上を図ったのが大きな特徴だ。
2007年7月1日から営業運転を開始したJR東海・JR西日本のN700系16両編成は、新幹線の営業用車両で初めて空気バネストローク式車体傾斜装置を搭載した。この車体傾斜装置は東海道新幹線区間でのみ使用。半径2500mの曲線区間で車体を1度傾斜させることで、曲線通過速度を従来の時速255kmから270kmに引き上げて所要時間を短縮した。走行位置の把握にはデジタルATCを活用し、スムーズに車体を傾斜させている。
2011年には改良型のN700Aが登場。2015年から最高速度を時速285kmに引き上げ、それに伴い半径2500mの曲線通過速度も275kmに引き上げた。また、車体傾斜装置を半径5000mの曲線でも動作できるように改良し、この区間を285kmで通過できるようにしている。従来型のN700系もN700Aタイプに改造した。
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