カーブ克服して速度アップ「振り子式車両」の進化 新技術搭載の「やくも」は従来車とどう違う?

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特急「やくも」用新型車両の導入に際し、JR西日本は「やくも」のライバルが高速バスであり、非振り子車の導入で所要時間を犠牲にするのは避けたいと考えていた。2017年には空気バネストローク式車体傾斜装置の導入を検討するため、JR四国から8600系を借り入れて走行試験を行っている。その結果、土讃線と同様に伯備線では空気の消費量が多いことが判明。新型「やくも」も空気バネストローク式車体傾斜装置ではなく、振り子車両とすることとなったという。

JR西日本は制御付き自然振り子方式の精度を上げるため、車上型の制御付き自然振り子方式を鉄道総研・川崎車両と共同で開発した。

「車上型制御付き」の新型やくも

実は制御付き自然振り子方式は、走行位置を補正するATS地上子と曲線入口までの距離が若干あり、その間の空転・滑走による誤差で車体傾斜のタイミングがずれることがあった。車上型の制御付き自然振り子方式は、CCに線路マップをインストールしている点は従来の制御付き自然振り子方式と同様だが、先頭車にジャイロセンサを搭載している点が異なる。

このジャイロセンサが検知した曲線などの走行データを線路マップと照合して走行位置を正確に把握し、曲線の入口に合わせて車体を傾斜させ、乗り心地の向上を図っている。273系の車上型制御付き自然振り子方式は、381系の自然振り子方式と比べて乗り物酔い評価指標が最大23%改善するという。

273系 車上型制御付き自然振り子方式の図解
新型「やくも」273系が採用した車上型の制御付き自然振り子方式の概念図(筆者撮影)

また、振り子アクチュエーターも改良。アクチュエーターの出力は従来のキハ187系では3段階切換式だったのに対して273系は無段階で連続的に制御できるようになっており、車体傾斜制御をより緻密に行うことが可能となっている。

273系の台車
273系の振り子台車。振り子アクチュエーターを改良して車体傾斜をより緻密に制御することができる(筆者撮影)

なお、ジャイロセンサを用いた制御付き自然振り子方式はJR東海が開発中の「しなの」用新型車両385系にも採用される計画となっている。こちらの詳細はまだ明らかにされていないが、JR東海は現行の制御付き自然振り子方式の383系よりも乗り心地が約15%改善されると発表している。

一時は全国各地の特急に採用された振り子装置だったが、近年は車体傾斜装置への置き換えや非振り子化など、逆風が吹いていた。しかし、土讃線で振り子装置が見直され、273系では進化を遂げた。振り子車新時代を切り拓いた273系の乗り心地を早く試してみたいものだ。

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松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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