カーブ克服して速度アップ「振り子式車両」の進化 新技術搭載の「やくも」は従来車とどう違う?
振り子アクチュエーターを正確に作動させるためには、曲線が始まる位置を正確に把握する必要がある。そのため振り子装置を作動させる区間の曲線の位置(距離)、半径などの情報を記録した線路マップを車両のCC(コマンドコントローラー)にインストールしている。
実際の走行距離は、車輪に取り付けた速度発電機から算出。線路に設置しているATS地上子からの信号で、空転や滑走による走行位置の誤差を補正しながら走行して曲線の場所を把握し、曲線の手前でCCから各車両のTC(チルトコントローラー)に車体傾斜を指令する。
283系・キハ187系は振り子台車も改良され、コロ式からベアリングガイド式に改めている。ベアリングガイド式はJR四国8000系試作車とJR北海道キハ281系第2次試作車に初搭載され、キハ281系量産車で実用化。以後JR北海道キハ283系、JR東海383系、JR四国2700系でも採用している。
ベアリングガイド式は振り子梁に取り付けた円弧状のガイドレールを台車枠に搭載したボールベアリングボックスで挟んだ構造となっていて、コロ式よりも低重心化を図ることができる。
283系・キハ187系の車体傾斜角度は381系と同じ最大5度。ただし振り子遅れがないため、曲線通過速度は本則プラス30km以上と、381系と比べて10km以上速くなっている。
コストを抑えた「空気バネ式車体傾斜」
自然振り子方式・制御付き自然振り子方式共通の欠点は台車の構造が複雑で、イニシャルコスト・ランニングコストが高くなる点にある。そのためJR西日本は「くろしお」の381系を置き換えるための車両は、振り子式ではない287系・289系とした。
一方、1990年代後半からは「空気バネストローク式車体傾斜装置」の開発が本格化した。これは既存の台車をベースとすることが可能で、イニシャルコスト・ランニングコストを抑えることができる。その反面、車体傾斜角度は振り子方式よりも小さくなるが、制御を緻密にすれば振り子方式と同等の曲線通過速度で走行することも可能だ。
空気バネストローク式車体傾斜装置を最初に実用化したのはJR北海道で、1996年に通勤形気動車のキハ201系に搭載。1999年には特急形のキハ261系も導入した。
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