JR上場4社、通期予想に「上振れ余地」があるのは? 2024年3月期の収入や費用見通し、保守的な例も

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鉄道事業の運輸収入については、定期は年度を通じて2019年3月期比90%程度で推移するというものだったが、実際には4~6月が92.7%、7~9月が92.9%と想定を上回っている。定期外は2023年第4四半期の87.5%から徐々に上昇して100%に近づき、年度の平均は95%程度という見立て。実際は4~6月が92.8%、7~9月が94.1%と上昇基調にあるものの、やや弱含んでいる。なお、新幹線は好調だが、在来線の回復が弱いという。会社側は近畿圏、首都圏と比べると地方の人流が鈍いと考えているようだ。

通期の業績予想は売上高が4170億円、営業利益が457億円で、期初予想から変更なし。通期予想と比較した上期の営業利益の進捗率は58%で、ペースとしては上振れている。ただ、会社側は上期に計画していた修繕費が下期にずれ込む、2024年初頭に開業する長崎マリオットホテルの開業経費が20億円ほど発生するなど下期の費用増を見込んでいる。その反面、動力費が想定ほど増えていないことや、上期の修繕費が下期にずれこむにしても逆に下期の修繕費が来期にずれ込むケースもあるはずなので、会社側の想定は慎重と考えられる。

真価を問われるのは2024年度以降

以上、JR4社の決算についてまとめてみた。JR東日本とJR九州は業績予想を据え置いたが、上振れる可能性はありそうだ。JR東海とJR西日本は業績予想を上方修正したが、両社とも上期実績の好調分を織り込んだだけなので、下期に運輸収入がさらに伸びると考えれば、なお上振れ余地がある。少なくとも各社とも足元の鉄道利用状況は好調だ。

コロナ禍でどこまで赤字が膨らむか予想もつかなかった決算とは大違いだ。そうした状況と比較しての今期決算は各社とも大幅増収増益となるのは間違いない。むしろ、真価を問われるのは来期決算である。コロナ禍から完全脱却し、持続的成長路線に復帰できるか。経営者の腕の見せ所だ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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