例えば、顧客の中には港区の新築マンションを1億円で購入し、それをわずか半年ほどのうちに「3割増し」で売却した人がいる。その顧客は、売却資金をベースにして、私が別の場所に戸建て住宅を建てる計画である。
この話が良い例だが、外資系金融マンは、分譲マンションに特に大きな愛着があるわけではないので、「売れるときに売る」というスピード感はズバ抜けている。彼らのように「購入できる財力と、運用するテクニックがあるなら、不動産は購入してもいい」というのが私の持論だが、多くの日本人はそうした知識もテクニックもないのが現状である。
今買うのは「リスクが高い」と言えるワケ
長く住む場合はたくさんの積立金が必要になり、遅かれ早かれ自分自身も理事として住民の世話をすることを余儀なくされるなど、さまざまな「コスト」が発生する。買った方が良いのか、借りる方が良いのかについてはさまざまな議論があるが、ことおカネの面だけで言うならば、現段階で買うことは非常にリスクが高いと言わざるを得ない。
ではなぜそう言えるのか。理由の一つは、市場にあまり良い物件が存在していないということだ。現状は建築関連の人件費が上がりすぎているため、物件の品質は相対的に下がっている。
また、高く売れるマーケットが限られていることも問題だ。確かに港区の物件は高く売れるが、ブランドのない他のエリアでは高値はつかない、というような時代に入っていく可能性がある。
一方で、絶対価値の高いものが存在しているのも事実だ。例えば建築家によるデザイン性に優れたマンションがそうだ。これらを求める人がピンポイントでたくさん増えれば、時間が経過しても値崩れせず、反対にプレミア価格で売れる時代になるかもしれない。
また、「場所そのものを購入する」という発想もあるだろう。例えば東京都の表参道に家を買う場合、場所そのものの価値を購入することになるため、必ずしも物件そのものに価値がある必要はない。戸建て住宅の場合は、住環境を買うことになるので街並みの善し悪しは重要になり、近隣や周辺の空気感が決め手になってくる。
対して、マンションの場合には、駅からの距離などが価値に直結することが多い。同じ住宅であっても価値の基準はかなり違うのだ。一戸建ての場合は、むしろ駅から離れた落ち着いた住宅地が好まれる場合もある。港区の物件を持つオーナーには、そういう人が少なくない。
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