「迷走する司法試験」ロースクール現役学生の本音 「ローは受験資格を得るためだけのもの」
予備試験が最優先という姿勢は、ほかのロー生や法学部生からも見える。
早稲田大法学部3年のBさん(20歳)は「予備通った人が9割受かるんだったら、ローって要ります? ローは学生の身分を得るためのもの。在学中に予備試が無理だったら、ローの2年は猶予期間かなというのが、周りの考えとしては定番です」と手厳しい。
できるだけ早く予備試験に通り、会計士資格も取って、ビジネスシーンで使える人になるのが夢だという。
「学部在学中の予備試組が最強で、次がロー在学中の予備試。ローを出て一発合格は3番手と階層ができています」と慶応ロー1年Cさん(23歳)は語る。
事務所訪問をすると、予備試組は優秀さの指標とされていて「市場価値が高い」と感じるという。
2019年に新設された「法曹コース」(通称3+2)については価値を判断しかねている様子。 「勉強一辺倒になってしまい、生き急いでいる気がする」(Cさん)「大学で勉強以外のサークル活動もできない。交流したことないですね」(Bさん)
「合格率約7〜8割」の幻想
ロースクールは法曹養成に特化した教育をおこなうために2004年に設置された。68校が開校し、翌年の2005年には74校になった。ロースクールの志願者数は減少傾向が続き、2018年度には過去最低となる8058人に落ち込んだ。2011年度からは学生募集の停止や廃止が続き、2023年度はピーク時の半数以下となる34校だった。
法学を学んだ既修者コース(2年)に加え、社会人や他学部出身者などの多様な人材を呼び込むため、未修者コース(3年)がもうけられた。司法制度改革の審議会では修了者のうち「相当程度(例えば約7〜8割)の者が新司法試験に合格できる」よう、充実した教育をおこなうべきとされた。
約7〜8割が合格できるかもしれない──。新たな制度は注目を集め、開設当初の入学志願者数は7万2800人、倍率は13倍にも上った。2005年度には4万1756人に落ち着いたが、2007年度まで4万人台を維持していた。