PICOはバイトダンス傘下に入った翌年の2022年、野心的な2つの目標を掲げた。主力製品のVRゴーグルの販売台数を年間100万台に引き上げることと、VRゴーグルの(アプリケーションを多様化して)1週間当たりのアクティブユーザー数を販売台数の50%以上に増やすことだ。

これらを達成するため、バイトダンスはPICOに対して大量の経営資源を投入して支援した。その結果、PICOの従業員数は買収前の300人から2022年9月時点で2000人に急増。マーケティングに関しては、TikTokの中国版の「抖音(ドゥイン)」でVRコンテンツを使ったライブコマースを積極展開したほか、VRゴーグルやコンテンツを実際に試せる体験型ショップを各地に開設した。
にもかかわらず、PICOのVRゴーグルの実売台数は目標に遠く及ばなかった。ネット上で巨大なトラフィックを動員できるバイトダンスをもってしても、リアルな商売で成功できるとは限らないことが立証された格好だ。
長年のボトルネック解消せず
市場調査会社のIDCのデータによれば、中国市場における2023年上半期(1〜6月)のVRデバイス販売台数(出荷ベース)は約26万台と前年同期の半数以下に落ち込んだ。PICOはその間に約15万台を販売して6割近いトップシェアを獲得したものの、市場縮小の影響は避けられない。

中国のVR業界は過去に複数回の投資ブームを経験したが、長年のボトルネックがいまだに克服されていない。コンシューマー向けVR機器の価格の高さ、利用可能なコンテンツの少なさ、得られる体験と(VR酔いなどの)快適性のアンバランスなどだ。そのため効果的な用途が限定され、VRの商業的ポテンシャルが発揮されない状態が続いている。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は11月7日
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