中国「独身の日セール」日本ブランド大苦戦の深刻 節約志向でセールは過去最高更新見通しだが…

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しかし今年は日本の化粧品ブランドの凋落が大きなニュースになっている。

アリババ「Tmall」ではセール初日の「化粧品ブランドGMVランキング20」で日本ブランドが1社も入らず、トップ10の常連だった資生堂、SK-Ⅱも圏外にはじき出された。

Tmallの化粧品カテゴリーではセール開始10分で12ブランドがGMV1億元(約20億円)を達成したが、日本ブランドトップの資生堂は4時間で前年同期比74.1%の1億3000万元(約26億円)にとどまった。

日本ブランドに絞ったGMVトップ10を見ても、SK-Ⅱが同85.8%減、クレ・ド・ポー ボーテとコスメデコルテは50%以上数字を落としている。

ショート動画の快手(Kuaishou)、抖音がセール序盤に発表した化粧品ブランドランキングでも、上位20に日本ブランドの姿はない。

化粧品ブランドにおいて、あらゆるプラットフォームでトップを快走しているのは中国の珀莱雅(PROYA)だ。若い中国人消費者が自国ブランドを積極的に選ぶようになった現れだろう。

ただ、Tmallの化粧品ランキングでは欧米ブランドのロレアル、ランコム、ゲランが2~4位に入っており、日本ブランドの一人負けは「中国ブランドの台頭」よりも東京電力福島第一原子力発電所が8月に処理水の海洋放出を始めた影響が長引いていると考えるほうが自然だ。

処理水放出後、中国で激しい日本叩きが起きたのは記憶に新しい。日本バッシングは短期間で収束したものの、日本製品を積極的に売りにくい状況は変わっておらず、中国越境ECの関係者は「今年の独身の日セールでは、日本ブランドのプロモーションを控える」と9月ごろから話していた。

資生堂もポーラも中国で苦戦

資生堂が10日発表した2023年1~9月期連結決算は、処理水放出後に中国や外国人旅行者向け市場が急失速し減収となった。第3四半期単独の中国事業のEコマースの落ち込みは前年同期比で20%後半に上り、同社は2023年通期の業績見通しも下方修正した。

ポーラ・オルビスホールディングスが10月30日に発表した2023年1~9月期連結決算では、第3四半期単独の中国の売上高が前年同期比24%減少した。両社とも、ライブコマースやインフルエンサーを起用したプロモーションの取りやめで、新規顧客獲得に苦戦していると説明した。

アリババは例年、独身の日セール時期に日本メディアにトレンドや取り組みを説明するが、今年は「2023年春に企業分割を行い、全体を取りまとめて説明する体制がない。質問があれば各部門の担当者につなぐ」と情報発信に消極的な対応に終始している。日本ブランドの売れ行きについてはあまり触れられたくないというのが本音なのではないだろうか。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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