「セダンを諦めるのはまだ早い」と言える根拠 続々と廃止されるが「突き詰める余地」はある

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「クラウン クロスオーバーは、デザインこそ大幅に変わったが、先代クラウンからの乗り替えも多い。依然として高齢のお客様が目立つが、クロスオーバーの外観にも理解を示されている。セダンがダメなのではなく、マンネリ化させないことが大切だと思う」

たしかに1990年頃までは、「マークII」やクラウンなどの上級セダンも背の低いハードトップを用意して、デザインや機能に多様性を持たせていた。それが2000年頃からはミニバンの台頭もあり、セダンのデザインは変化が乏しくなった。2021年のクラウンの販売台数は、1990年のわずか10%だ。

1987年に登場し、ヒットモデルとなった8代目クラウン(写真:トヨタ自動車)
1987年に登場し、ヒットモデルとなった8代目クラウン(写真:トヨタ自動車)

コンセプトとその表現手段になるデザインは、常に新しく進化させる必要があり、まさにマンネリ化させないことが大切になる。また、日産の販売店では以下のような話が聞かれた。

「最近の日産は車種が大幅に減った。特に『キューブ』のようなコンパクトで背の高いクルマは必要だ。キューブは左右席の移動もしやすく使いやすいから、後継車種を待っているお客様も多い」

今の日産には「マーチ」もなくなり、コンパクトクラスは「ノート」1車種でカバーしている。では、セダンはどうか。

シリーズハイブリッドのe-POWERのみとなった現行型のノート(写真:日産自動車)
シリーズハイブリッドのe-POWERのみとなった現行型のノート(写真:日産自動車)

「スカイラインには根強いファンが多いため、今後も進化させてほしい。ただし、ボディがかなり大きく、価格も高くなったから、もう少しコンパクトなセダンがあると喜ばれる。後席の居住性や荷室を重視するお客様はミニバンやSUVを選ぶから、セダンでは実用性の優先順位が下がった。少々狭くても、カッコ良さと走りの楽しさ、運転のしやすさが大切になる」

セダンを突き詰める余地はまだある

2023年9月には、トヨタ「センチュリー」にSUV風の新しいタイプが加わった。通常なら「センチュリー クロスオーバー」といった車名を与えられそうだが、それが見られない。むしろ、従来型をセンチュリー(セダン)と表記しており、主役がSUVタイプに入れ替わったようにも受け取れる。

トヨタはSUVやクロスオーバーではなく「新しいセンチュリー」と呼ぶ(写真:トヨタ自動車)
トヨタはSUVやクロスオーバーではなく「新しいセンチュリー」と呼ぶ(写真:トヨタ自動車)

センチュリーをSUV風に進化させるのも活性化の手段だが、もう少しセダンを突き詰める余地はあるだろう。クラウン クロスオーバーは、セダンボディを踏襲しながら、新しい進化を見せた。セダンには先に述べた低重心/高剛性/低騒音という特徴があり、それを生かした趣味性の強いクルマ造りにチャレンジしてほしい。セダンを諦めるのはまだ早い。

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渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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