「セダンを諦めるのはまだ早い」と言える根拠 続々と廃止されるが「突き詰める余地」はある

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しかし、2023年の1カ月平均登録台数を見てみると、ISが780台、LSは200台、ESは330台と少ない。ISの発売は2013年と古く、大きな改良を受けても商品力は下がっている。

LSは全長が5235mm、全幅は1900mmに達するため、販売店から「先代LSのお客様が購入したくても、車庫に入らない場合もある」という話が聞かれる。その意味でESはLSよりもコンパクトで車内は広く、実用性を高めてはいるが、雰囲気は少し地味だ。

レクサスLSは先代まであったショートボディがなくなりロングボディのみとなっている(写真:トヨタ自動車)
レクサスLSは先代まであったショートボディがなくなりロングボディのみとなっている(写真:トヨタ自動車)

このような状態だから、レクサスで最も多く売れる車種はSUVの「NX」で、1カ月平均登録台数は約3900台にのぼる。それでもレクサスは、今ではセダンが充実するブランドだ。

スバルは「インプレッサ」のセダン「G4」を廃止して、現行型は5ドアハッチバックのみになった。それでも水平対向4気筒2.4リッターターボエンジンを搭載するスポーツセダンの「WRX」は健在だ。

セダンに必要なのは「カッコ良さ」

このように見ると、セダンが実用性で選ばれる日本車の中心カテゴリーだった時代は終わり、今では個性派に移ってきた。そのためにファミリー向けをはじめとする保守的なセダンは苦戦して、日産は大半の車種を廃止。トヨタもカローラセダンが低迷して、スバルはインプレッサのセダンをやめた。

その代わり日産は、スポーツセダンの象徴とされるスカイラインは残した。トヨタはクラウン クロスオーバーの売れ行きが堅調で、上級ブランドのレクサスに3車種を設定する。スバルは高性能なWRXを用意する。

スバル WRX S4。派手なスタイリングからも走りを想起させる(写真:SUBARU)
スバル WRX S4。派手なスタイリングからも走りを想起させる(写真:SUBARU)

従来の典型的なセダンはもはや飽きられて売りにくいが、走行性能や運転の楽しさ、乗り心地や快適性、カッコ良さに重点を置けば、今でも売れる余地があるわけだ。

この傾向はセダンの商品特性とも関係している。セダンは、SUVやミニバンに比べて天井が低く、重心も抑えられている。後席とトランクスペースの間に骨格があり、ボディ剛性を高めやすい。トランクスペースは居住空間から隔離されるため、後輪が路上を転がる音も乗員の耳に届きにくい。

これらの相乗効果により、セダンは走行安定性、乗り心地、静粛性を向上させるのに有利だ。言い換えれば、運転の楽しさや快適性を重視するクルマに適しており、優れた走行安定性は危険回避性能の高さにもつながるから、ユーザーの関心が集まる安全性も向上させやすい。

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