止まらない円安、流れを変える唯一最大の決定打 投機筋の動きを止めるには「きっかけ」が必要

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ただ、その間、急激に円安が進むようであれば財務省が為替介入に動いてくる可能性は十分にある。日本政府として春闘まで為替レートを現状レベルで維持できれば御の字という考え方をしているのであれば、日本には豊富な外貨準備があるので、それで春先まで牽制・介入し続けることは可能だろう。

そして来年の4月以降はアメリカの利下げに加えて、日本の利上げもありえる。このタイミングが近づくにつれてドル安・円高の圧力が徐々に加わるだろう。そうなれば為替が一時的に140円台前半へと押し戻される時間帯は出てきそうである。

だが、そこから先は日本次第だ。強いアメリカ経済はどこかで再利上げを余儀なくされるだろうし、日本がどこまで利上げを継続できるか先行きを見通しづらい。また日本は経済規模に対して発行している国債額が絶対額としてもアメリカとの比較でも大きい。そのため利上げは利払い費の増加に繋がり、国家財政への負担が非常に大きいものとなる。

根本的に強い経済を構築する必要

重要な点は為替レートは経済活動を後追いするということ。為替レートを円高にしようと思えば、基本的にはアメリカよりも強い経済を構築し利上げにも耐えられるようにしなければならない。また国の財政もより健全にしていかなければならない。

はたしてそれは可能なのか? 真面目に考えれば考えるほどに、円の中長期的な先安観が脳裏に浮かんでくる。

世界の投資家は国家の財政、国の収支、金利、エコシステム、そうしたもの全てを俯瞰し把握しようと努めている。付け焼き刃の政策で円安が変わると考えるのは危険だ。

日本経済が本質的に変わらなければ、円安が持続的な基調へと変化してしまう。そして中長期的に1ドル200円の方向へ進んでいく未来も頭の片隅に入れておきたい。

戸田 裕大 トレジャリー・パートナーズ代表

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とだ ゆうだい / Yudai Toda

外国為替の専門家。2020年に中国より帰国後、日本のFX個人投資家に向けた情報提供に力を入れている。2018年まで10年間SMBCの為替ディーラーを務める傍ら、日系企業750社の為替リスク管理を支援。そのうち3年間は上海を拠点に人民元の調査に従事した。中央大学法学部卒、中欧国際工商学院(CEIBS)経営学修士。

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