神龍汽車の工場売却の背景には、中国市場における深刻な販売不振がある。同社の販売台数は2015年の71万台をピークに減少し続けており、2023年1月から9月までの販売台数は前年同期比29.5%減の6万4000台に落ち込んでいた。
内情に詳しい関係者によれば、神龍汽車の社内ではステランティス側と東風汽車側の(経営方針をめぐる)軋轢が長年続いてきたという。
ステランティス側は、グローバル市場におけるプジョー車とシトロエン車の売れ行きが順調なことを根拠に、中国市場の販売不振はクルマ自体の問題ではなく、東風汽車側の販売体制に問題があると主張。これに対して東風汽車側は、ステランティス側が中国市場のニーズを理解しておらず、ブランドイメージで競合他社に差をつけられたと反論するという具合だ。
急速なEVシフトが背中押す
そこに追い打ちをかけたのが、中国市場における過去数年の急速なEV(電気自動車)シフトだ。外資系合弁メーカーはこの変化に乗り遅れ、中国ブランドのEVに市場シェアを奪われている。そのため神龍汽車の苦境がさらに深まり、ステランティスの戦略転換につながったと見られている。
ステランティスは、合弁会社の資産売却を通じて中国事業へのエクスポージャー(リスクにさらされている資産の割合)を下げるとともに、今後は神龍汽車をプジョー車とシトロエン車の輸出拠点と位置付け、東風汽車集団と共同で育成する計画だ。
具体的には、神龍汽車で生産しているSUVの「プジョー4008」と「プジョー5008」を東南アジア市場に、「シトロエンC5X」をヨーロッパ市場に輸出する。東風汽車集団によれば、神龍汽車はすでに2022年に3万7000台の自動車を輸出しており、それをさらに伸ばしていくという。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は10月21日
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