ヤマト「荷物減少」と「配達員3万人」契約終了で誤算 3期連続で下方修正「負の連鎖」を断ち切れるか

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組合側は「メイトは労働組合法上の労働者にあたる」として団交を求めているが、ヤマトはこれを拒否。そこで組合は10月31日、東京都労働委員会に不当労働行為の救済命令を申し立てた。

一方、メール便の仕分けなどを担当するパート社員についても、来年1月末での解雇が示されていたが、足元では流れが変わっている。

10月中旬に労組「ヤマト運輸茨城班」を結成した茨城ベースでは、解雇の方針から一転、責任者が「1月31日以降も継続勤務をしてくれないか」と説明。ベースを含む県内の営業所で90ほどの募集職種のリストを示している。対応は地域によって異なるようだが、ヤマトは一斉解雇の方針をとりやめたようだ。

建交労軽貨物ユニオンの高橋英晴委員長は「茨城では組合ができたこともあって、交渉できることになったが、メイトについても団交ができる足場を作っていく。辞めるなり、日本郵便に移るなど、1人ひとりに合った協議をしてほしい」と語る。ヤマトと具体的な話が進まなければ、茨城ベースでストライキを実行する可能性もあるという。

10月から日本郵便への荷物移管が開始

一連の問題について、栗栖副社長は「本社から現場に伝達するところで齟齬があった。当初から考えが変わったわけではない」としつつ、「すべての皆さまに心からの感謝を申し上げるとともに、可能な限りの支援を継続していく。丁寧に面談して進めていきたい」とサポートを続ける姿勢を改めて語った。

荷物量の回復が鈍い中で法人顧客との料金交渉を重ね、ECネットワークを構築し、現場の改革も進める。さらには業務移管に伴うパート社員やメイトへのサポートも急がねばならない。10月からは日本郵便への荷物の移管が始まっている。ヤマトの課題は山積するばかり。今後も実に難しい舵取りが求められることになる。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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