投開票まで1年「刑事被告人」が最有力大統領候補 アメリカ大統領選挙はどんな結末を迎えるか?

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どのシナリオの場合でも、政治の分断と混乱が深刻化し、政策の立案・遂行が遅れることが懸念される。アメリカと対立する中国とロシアにとっては望むべき状況だろう。北大西洋条約機構(NATO)や日米、米韓など同盟関係にもほころびが生ずることになりかねない。ウクライナ支援にもブレーキがかかることが十分に予想される。イスラエルへのハマスの攻撃に端を発した今回の中東情勢の悪化で、アメリカがこの2地域への対応に追われ、アジアに振り向ける余力を失うかもしれない。

長期的には2大政党制が揺らぎ、政界が再編に向かうことも考えられる。大統領選挙における選挙人制度の改革も、これまで以上に重要課題として認識される可能性がある。いずれも、民主主義が機能していることを示しているとも言えるが、その過程で対立と分断が拡大する可能性もあり、日本を含む世界各国にとって懸念すべきことである。

混迷する世界に日本はどう対応すべきか

とくにトランプ復権は大問題となろう。裁判への対応に追われ続ける大統領に、国や世界の将来に関して正しい判断を下すことができるのだろうか。それでなくても自己の利益を最優先に考えるとされる人物である。さらなる再選はありえないので、遠慮すべきものはなくなるだろう。内政も外交もかつてと同様、思い付きや場当たり的な対応が多くの問題を起こしそうだが、彼がより大胆な行動をとることも懸念される。

拙著『アメリカの政治任用制度』で指摘したように、トランプ政権下では人事が、能力より大統領への忠誠を基準に判断されてきた結果、多くの混乱を招いた。政敵への復讐に燃える大統領がそのための任用に傾斜すると、多くの反発を招くことになり、結果的にアメリカの政策の有効性が損なわれることになろう。

このような混迷する世界に日本はどう対応すべきなのだろうか。まず認識すべきは、アメリカの分断と混乱は今後も続くことを前提に今後の外交を考えるべきである。民主主義の盟主が揺らぐのなら、日本にはそれを支え補完する役割が求められよう。

もちろん、日本は自らの国益を守り、その増大を図ることが大事である。誰が大統領になろうと、受け身ではなく、日本のために活用する発想を持たなければならない。

トランプ劇場の主役が表舞台から去っても、その影響は残り、分断と対立のドラマは演じ続けられることになろう。トランプ復権に備え、いまからシミュレーションをしておくことは、その意味でも重要である。

小池 洋次 関西学院大学フェロー

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こいけ ひろつぐ / Hirotusgu Koike

1950年和歌山県生まれ。1974年横浜国立大学経済学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。シンガポール支局長、ワシントン支局長、国際部長、日経ヨーロッパ社長、論説副委員長等を経て、関西学院大学総合政策学部教授。日経、関学大在職中、総合研究開発機構(NIRA)理事、世界経済フォーラム・メディア・リーダー、米ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際大学院(SAIS)客員研究員等を兼務。現在、関西学院大学フェロー、グローバル・ポリシー研究センター代表。主な著書に、『アジア太平洋新論』(日本経済新聞社)、『政策形成の日米比較』(中公新書)、『アメリカの政治任用制度』(東洋経済新報社)等。

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