1社独占の英仏高速鉄道に「殴り込み」新参の勝算 30年間「ユーロスター」だけ、なぜ他社参入せず?

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1994年に開業し、すでに約30年が経過した英仏海峡トンネルだが、開業から今に至るまで、ユーロスター1社のみが営業を続けてきた。オープンアクセスによって、官民問わず誰もが参入可能となったEUの鉄道業界だが、英仏という経済的に強大な2国間を結ぶ鉄道事業へ、これまでどこの企業も参入しなかったのは不自然に思われるのではないだろうか。

実際、過去にはドイツ鉄道がイギリス乗り入れを検討していたことがあり、同国の高速列車ICE3がロンドン・セントパンクラス駅へ乗り入れるデモンストレーションを行ったこともあったが、この話は立ち消えとなってしまった。

DB ICE3
ロンドン乗り入れが実現しなかったドイツ鉄道の高速列車ICE3(撮影:橋爪智之)

イギリス乗り入れ「2つの問題点」

他国からイギリスへの鉄道乗り入れがなかなか進まない理由として、2つの問題点が考えられる。1つは出入国管理、もう1つはそれを起因とする非効率な運用を強いられること、という2点だ。

他国からの列車がイギリスへ乗り入れる際、一番大きな足かせとなっているのが出入国管理だ。イギリスはブレグジット(EU離脱)以前から、欧州各国間を国境審査なしで行き来できる「シェンゲン協定」に非加盟のため、EU各国から入国する場合、もれなく出入国管理が付いて回る。

ユーロスターは、出入国管理は出発する駅で済ませてから乗車する。フランスならパリ北駅やリール駅、ベルギーならブリュッセル南駅に出入国管理事務所が置かれ、ここで各国の出国とイギリスへの入国手続きを行う。乗車前にパスポートやビザに不備が見つかれば乗車することができない。これはすなわち、英仏海峡トンネルを経由してイギリスとEUを結ぶ列車を運行する場合には、すべての停車駅に出入国管理事務所および制限区域を設ける必要がある、ということだ。

実際、ユーロスターがオランダへ延長運転を開始した際は、停車駅のアムステルダム中央駅とロッテルダム中央駅に出入国審査時の制限区域として指定されたユーロスター用のホームがわざわざ設置された。また、これらの制限区域の設置が遅れたため、運行開始当初はロンドンからアムステルダムへの片方向の運行しか認められず、逆方向は回送扱いとなっていた。

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