ハマスと同時に一般市民も対象とする集団的懲罰は、国際人道法違反にあたる。退避勧告は、イスラエルのアリバイ作りにしか聞こえず、国連もその規模の住民の退避は不可能だと指摘している。
――矢加部さんのいる場所はどういう状況ですか。
事務所は、イスラエルの占領下の東エルサレムにあり、住民の大半はパレスチナ人である。エルサレムにあるためイスラエル、ハマスどちらの攻撃の対象にもなりにくく、比較的安全な状況にある。
ただ、事務所から車で10分ほどの場所にある難民キャンプではパレスチナ人とイスラエル兵の衝突が起きている。楽観視できる状況ではない。
病人、子どもを抱えての避難は困難
――ガザにいる同僚の方たちは避難できていますか。
2人とも事情があって、退避命令の出ているガザ市の自宅にとどまっている。避難対象は110万人だが、南部に逃げたのは数十万人という報道もある。多くの人がガザ市に残っているようだ。
スタッフの1人は20代後半の男性。父親が治療困難な心臓の病気を抱えており、先月煩雑な手続きを経てヨルダンで緊急手術を受けたばかりの状態だ。加えて、自宅に30人ほどの親戚や、周囲の困っている人をかくまっている。
病人を含めてみんなで避難するのは現実的ではない。なんとか彼1人でも逃げてほしいが、家族は見捨てられないという。
もう1人は40代後半の女性スタッフで、小学校4年生から大学生までの4人の子どもがいる。行く当てがなく、逃げることができないという。もともと彼女の親が、ガザに難民としてきた経緯があり、立て直してきた生活を失いたくない、逃げることは耐えがたいとも話している。
彼女は空爆の中でも、家庭内暴力から逃れてきた女性を自宅で保護している。
空爆の翌日、自分の安全も確保されない中で、支援事業の参加者への労賃支払いを心配し、事務所に電話をかけてきた。「私は善良な市民。(もし空爆で命を落としても)神様に受け入れられるだろう」と、悟りの境地に至っているようだ。
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