「どうやって逃げろというのか」、緊迫の中東ガザ 東エルサレム駐在・日本人NGO職員に緊急取材

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――病院などには逃げられないのでしょうか。

同僚の家の近くには大きな総合病院があるのだが、すでに避難者と患者が3万人集まっている状態だという。

だが、今回すでに数カ所の病院が空爆の標的にされている。過去の紛争では、ハマスが比較的狙われにくい病院や学校に武器を隠しているとイスラエルが主張し、攻撃をしている。

――病院の医療活動の状況は。

医療物資はもちろん入って来ず、医薬品のストックもなくなりつつある。電気がないので、人工透析機などの医療機器が動かなくなる危険もある。国連の最新のレポートでは燃料があと24時間分しかない。空爆で道がなく、病院へアクセスすらできない人もいる。

そもそもガザでは肉や野菜が高く、パンが安いので、糖尿病や肥満といった生活習慣病を抱える子どもが多い。糖尿病に必要なインスリン注射なども支援物資が滞れば入って来ず、そうした医療物資を入手できる人道回廊設置の見通しはまだ立っていない。

ヨルダン川西岸地区でも高まる緊張

――東エルサレムと隣接するヨルダン川西岸地区(パレスチナ)の状況はどうですか。

10月7日の侵攻以降、西岸で殺害されたパレスチナ人の数がすでに50人を超えている。緊張は高まっていて、陸路で他国に出ることはいつも以上に難しい状況になっている。

そもそもイスラエル現政権は入植推進派で、ハマスによる攻撃の前から緊張が高まっていた。

6月にはジェニンという都市のパレスチナ難民キャンプを含む居住地で大規模な軍事衝突があったほか、西岸各地でイスラエル軍の侵攻が連日行われていた。10月にはユダヤ教の祝祭で、数千人のユダヤ教徒がイスラム教の聖地で宗教的な儀式をし、イスラム教の聖地としての現状を維持する国際的な合意が無視されていた。

今、イスラエルは地上侵攻をしようとしている。ガザ地区の境界に戦車を並べて、イスラエル当局の決定一つで地上戦が起きる状況だ。

ハマスがイスラエル領内に入った直後はイスラエルへの同情も強かったが、すでに報復による空爆でガザ地区では2800人以上が亡くなっている。ここ数日で、イスラエル擁護一辺倒だったEUなど先進国の足並みがそろわなくなってきている。欧米の主要都市で反対デモも起きている。

望みは薄いが、なんとかイスラエルによる地上侵攻は踏みとどまってほしい。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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