水族館の入館者を3倍にした戦略の「急所」とは? 「強み」をゼロから作り上げたクラゲ水族館

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徹底して「クラゲ」という「急所」に絞り、「あなたから買いたい(この水族館に行きたい)」を作った結果、大人気の水族館となりました。

クラゲ水族館の追うべき指標(KPI)

クラゲ水族館の戦略の「急所」は、「クラゲを増やせば入館者数が増える」ということでした。

「急所」がわかれば、組織として「追うべき指標」であるKPIも決まります。

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「クラゲを増やせば入館者数が増える」のですから、KPIは

・クラゲの展示種数

です。「クラゲの展示種数」を組織として追いかけて増やしていけば、それがクラゲ水族館の「強み」に直結し、そして入館者数が増えるのです。

「クラゲの展示種数」というKPIを追いかけ、「今日もクラゲ、明日もクラゲ、来月もクラゲ、来年もクラゲ」と、クラゲに絞った行動を取り続けることで、見事に復活をなしとげたんです。

なぜ「展示種数」が重要なのかというと、水族館というビジネスの性質上、近隣の方々が主要顧客セグメントの1つとなるからです。つまり、リピート(また来たい)が重要になります。

「また来たい」と思っていただくためには、何らかの変化や新しいニュースが必要になります。「クラゲ」に絞っている以上、それは「新しいクラゲ(の種類)」となるでしょう。

新しいクラゲが増えるほどに、「クラゲが増えたから、また行きたい」となるのだと思われます。ディズニーランドが新しいアトラクションを増設するのと同じようなものですね。

もちろん、地元客ではない方(例えば仙台市などの近隣の大都市の方など)にとっては、「クラゲの展示種数が日本一・世界一レベルで多い」ということ自体が魅力になります。このような理由で、「クラゲの展示種数」がKPIとなるわけです。

クラゲ水族館は、

・「クラゲを増やせば入館者数が増える」という急所を探し当て、

・「クラゲの展示種数」というKPIを追い続けることで

クラゲ世界一の水族館となり、奇跡の復活をなしとげました。

なお、戦略として重要なことは、

・「クラゲ」という当時は誰も真剣にやっていなかったこと

に注力したことです。

「ラッコ」というみんながやっていることではなく、「クラゲ」という誰もやっていない(にもかかわらず、来館者には大きな魅力となるもの)ことに集中したからこそ、わずかな時間で世界一になれたのだと思います。

「差別化」とは、誰もやっていないことをやることなんです。「市立水族館」として色々な制約もあったと思いますが、誰もやっていないこと(前例のないこと)にエネルギーを集中したことも重要な成功要因でした。

佐藤 義典 マーケティング・コンサルタント

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さとう・よしのり / Yoshinori Sato

ストラテジー&タクティクス株式会社代表取締役社長。米国ペンシルバニア大ウォートン校MBA。中小企業診断士。大手通信会社でマーケティング・営業を経験した後、外資系メーカーのブランド責任者、外資系エージェンシーの営業ヘッド、コンサルティングヘッドを歴任。2万人超が購読する無料メルマガ「売れたま! 」の発行者としても活躍中。『図解 実戦マーケティング戦略』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社)など著書多数。

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