「仕事を奪われるより怖い」生成AIがもたらす不幸 「不幸になる人」「幸福になる人」の決定的な差

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生成AIは、多くの人に学びの機会を与え、その結果、所得の低い家庭の子弟でも十分に勉強ができるようになる。

しかし、必ずそうなるとは限らない。それはAIを使う費用に大きく依存している。誰でもAIを無料で、あるいは低い料金で使えれば、ユートピアが訪れる。しかし、そうではなく、料金が高ければ、逆の世界になってしまう。AIの家庭教師は能力を高めるが、料金が高ければ、誰でも使うわけにはいかない。所得の低い家庭の子弟は使うことができない。

現在すでに、無料版のGPT3.5と有料版の4.0では性能が異なる。有料版ではプラグインを使って能力をさらに高めることができるが、無料版ではできない。すると、所得の高い人がそれを利用してさらに能力を高め、能力を拡大する。しかし無料版しか使えなければ、こうした利用をすることができない。

一部の特権階級だけがメリットを享受?

今後ChatGPTとAPI接続をした学習ツールが登場することが予想される。これらは必ずしも無料で利用できるとは限らない。有料になってもそれらを利用できる子供と、それらを利用できない子供との間で、学習の条件が大きく変わってしまうということがあるわけだ。

AIを使って能力を高め、生産性を高め、所得を増やす。それができる一部の特権階級と、それができずに低い能力向上で止まり、所得が低い大多数の人々との間で、著しい格差が発生する。

これまでも、親の所得が高ければ家庭教師をつけることができたという問題はあった。ただし、そうしたことによる学習条件の違いよりも、生成系AIの利用可能度の違いによる学習条件の違いは、はるかに大きなものになると考えられる。

以上のようなディストピアは十分に予想されるものだが ディストピアとしてはこれとはまったく性質が違うものも考えられる。

人々がAIの力で豊かになる。そして所得が増える。あまり努力せずに所得が増えるので、人々は、生きがいは何かということがわからなくなってしまう。

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