日本初のEVキャンピングカー「T-01」の正体に迫る 電動化×アウトドアは自動車業界で成功なるか

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撮影車両には、冷蔵庫や電子レンジなども装備されていた
撮影車両には、冷蔵庫や電子レンジなども装備されていた(筆者撮影)

さらに、これも私見だが、1150万円という価格と装備のバランスも課題かもしれない。この価格帯であれば、キャンピングカーのなかでも高級なモデル、例えば、トラックなどをベースに専用シェル(居住空間)を架装した「キャブコン(キャブコンバージョン)」なども購入できる。しかも、そうしたモデルでは、リビングやキッチン、トイレ、ベッドまで、ひととおり生活できる設備が整っており、豪華さや快適性はT-01より高い。恐らく、ELEMO-LをベースとするT-01でも、近い架装をすることは可能だろう。だが、そうすると車両重量が重くなり、航続距離がより短くなってしまう可能性がある。

現状でも、先述のとおり、1回の満充電で約270kmという航続距離のため、それがさらに短くなると、キャンピングカーとしては使いづらくなってしまいそうだ。また、装備をより豪華にすると、結果的に価格もさらに上がるだろう。そう考えると、T-01は、今の仕様が一番バランスがいいのかもしれないが、ガソリン車やディーゼル車をベースとする既存モデルとの競争力という点では、苦戦を強いられそうだ。

課題はあるがEVキャンピングカーの未来に期待 

カーステイでは、今後、ほかのタイプのEVキャンピングカーも企画しているというが、まずは、T-01が予定する20台の年間販売数をクリアし、順調な売れ行きを示すのかがカギになるだろう。幸先よく、第1弾モデルが市場に受け入れられれば、ブランドもより周知され、後続モデルも出しやすくなる。

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環境に優しく、将来的には増えてきそうなEVキャンピングカー。だが、現状では、さまざまな課題を抱えていることは確かだろう。カーステイの新規事業であるムーンやT-01、さらに、その後に控えているBEVモデルが、今後どんな展開を見せ、同社が掲げる「未来のスタンダード」へと成長できるのかに注目したい。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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