ミネラルウォーターの国内増産はもう限界、再び迫る“水不足”危機
首都圏を中心にミネラルウォーターの品薄が続いている。東京都が3月、金町浄水場(葛飾区)から暫定規制値の2倍を超える放射性物質を検出したことが発端だ。4月には千葉県で母乳から放射性物質を検出。「若い母親を中心に水の買い占めが連日続いた」(大手スーパー関係者)ため、スーパーやコンビニエンスストアなどは一人当たりの購入本数を制限した。
現在は制限を解除した店も増えているが、それでも「昨年を大きく上回るペースで売れている」(中堅スーパー首脳)。サーバー型宅配水で業界首位のアクアクララにも、注文が殺到。サーバー設置を待つ新規顧客は、関東圏だけで1万人を超えている。
利益率の低い飲料水 増産投資に二の足
「水道水に比べれば、ミネラルウォーターなどの地下水は安全性が高い」(産業技術総合研究所の丸井敦尚・地下水研究所グループ長)。水道水の多くが河川から採取されているのに対し、ミネラルウォーターは地下水だ。「地下水で放射能に汚染されるのは表層から10メートル以内。飲料用として採取される地下水は50~100メートルの深い層にあるものが多い」(丸井氏)。さらに、ミネラルウォーター国内首位のサントリーホールディングスや2位の日本コカ・コーラは、独自に放射線測定器を購入し、検査しているという。
大手飲料メーカー各社の震災後2カ月の出荷数量は、平均して前年同期比3割以上の伸びを記録。サントリーやコカ・コーラなどの工場は、今もフル操業を続けている。
そんな中、業界関係者が頭を抱えているのが、夏場の需要拡大だ。あるスーパーの調達担当者は「現在でも、きちんと調達さえできれば平時の8倍は売れるだろう。夏はどれくらい需要が膨らむのか想像もつかない」と言う。
ただメーカーは増産投資に消極的だ。そもそも、ミネラルウォーター市場はここ数年頭打ち。調査会社の富士経済によれば、2010年は猛暑だったにもかかわらず、市場規模は前期比0・5%減と横ばいだった。