太田:対象の隣にまで興味を持つ、すなわち「横展開」であると。
吉田:吉田ちかさんの場合、たまたまYouTubeをやって、興味の赴くまま先に進んでいった結果、どんどん横に広がって、結果それら全部が自分の好きなことに転化した。
外から見ると、結果的には階段を上がっているように見えるけど、彼女の中にそういう縦軸の志向はない。一方の男性は、なんとかして「上がりたい」と切望しているものです。
太田:吉田ちかさんの、偶然に偶然が重なって「好き」が天職になったという点は、女性としてすごく共感しました。これ、私の好きなキャリア論に当てはめると、スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱した「計画された偶発性」に重なるかなと。
吉田:どんな理論ですか?
女性は「海図」を求めない
太田:私流にいうと、「ガツガツ出世を狙っても、結局のところ人生は多くの偶然に支配されている。でも、その偶然の積み重ねで今の自分を形成しているよね」というもので。もちろん、待っているだけでは何も起こらないから、リスクを取ったり、好奇心を持ったり、アンテナを張ったりは惜しまない。吉田ちかさんの長所はそこにあるんじゃないでしょうか。
吉田:ゲスト講師のなかでいちばんぐいぐい学生に切り込んできたのは、評論家の宇野常寛さんでした。
太田:宇野さんは、「大切なものは自分の外側にある。それを世界に訴えるために批評を書く」といった主旨のことをおっしゃっていましたね。すごく印象に残りました。
吉田:僕なりに解釈すると、宇野さんの言う「外側」の世界って、海図のない世界のことなんですよ。
太田:海図、ですか?
吉田:与えられた宝島への地図が1枚だけだったとしても、世界はこの地図1枚だけじゃない。グーグル・マップを引いていけばいくほど、あるいはスクロールすればするほど、地図の周囲には別の世界が広がっている。それが「外側」の世界です。
太田:でも、外側を見るのは勇気がいることですよね。外側の世界を知るための一歩って、何なのでしょう?
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