トヨタは「強敵」に浮上したBYDと対抗できるのか コスト、供給網、SDV…中国で勝つ3つの条件

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しかし、2023年に入ると、BYDなど中国勢の躍進が外資系各社に大きな影響を与えている中で、業績の安定していたトヨタは苦戦している。中国乗用車市場におけるトヨタのシェアは、2021年の9.0%から2023年1~8月には7.7%へと低下しているのだ。

そんな中でトヨタは人員削減、組織再編、販売促進などを実施する一方、自社車両・技術の安全・安定性をアピールしながら中国勢に出遅れたBEV事業に、積極的な姿勢を示してきた。しかし、そこには期待とともに「3つの条件」が浮かび上がる。

PHEV対抗、サプライチェーン、SDV開発

1つ目は、中国勢のPHEV(プラグインハイブリッド車)に対抗することだ。2023年1~8月のBEV/PHEVのシェアは33%に達した一方、エンジン車のパイの縮小が値下げ競争を引き起こしている。

特筆すべきは、新車需要の半分を占めるボリュームゾーン(価格10万~20万元の大衆車)で、これまでエンジン車を購入していた消費者がPHEVに流れている傾向があることだ。

PHEVはモーターと大容量電池を搭載するため、50万~60万円以上ものコストがかかる。しかし、BYDは自社開発した「DM-iシステム」を搭載したPHEVを投入し、「油電同価(=エンジン車と電動車が同じ価格)」というキャッチコピーを掲げて、エンジン車市場に攻勢をかけている。

BYDの人気モデル、SEAL(筆者撮影)
BYDの人気BEVモデル、SEAL(筆者撮影)

特に2023年2月に発売したコンパクトセダン、「秦PLUS DM-i」チャンピオンバージョンは、トヨタのロングセラー「カローラ」と同様の価格帯で販売しており、2023年1~7月の販売台数は17.7万台と、カローラの1.7倍となった。

また、トヨタの優位分野である中型セダンでは、中間所得層以上が主に買い替えを目的に購入するため、「カムリ」が長年販売台数の上位を占めていた。BYDが9月に発売したPHEV「SEAL DM-i」はカムリより1割安く販売することで、中型セダン市場に打って出てきた。

価格、デザイン、パワートレインも洗練されているSEALがトヨタのドル箱である中型セダン市場で脅威になると、日本車の収益には大きな影響を与えると予測される。

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