公立校で常態化「非正規の教員」理不尽な働き方 「先生が3学期にいなかったことが悲しかった」

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一方でトモキさんによると、昨年夏は念願だったカナダの学校で先生になるチャンスをつかんだ時期でもあった。カナダの高校や大学に留学経験のあるトモキさんは、国立大学の教育学部在学中からカナダの州政府機関に教員免許の書き換えを申請。大学院進学後はカナダ側の担当者の指示に従い、教員免許の一種である専修免許を取得するなど準備を進めてきた。

区立中学の校長から任用期限の延長を打診されたのは、まさにカナダ側から教員枠が1つ空いたので速やかに渡航するようにとの連絡が来たのと同じタイミングだったという。トモキさんにしてみると、期限が二転三転した挙句、長年の夢を蹴ってまで学校側の要望に応えたのに、という思いもあった。

しかし、校長は「あなたがいると、子どもたちが復職した先生に懐かない」とそっけなかった。これ以上もめると次の学校で働けなくなるのではないか──。そう懸念したトモキさんは釈然としないまま学校を去った。

臨時的任用教員の極めて不安定なルール

これでは民間でいう契約社員の違法解雇に当たるのではと思いきや、公務職場で働く臨時的任用教員の場合はこの限りではない。

臨時的任用教員とは、産休や育休などを取る正規教員の代わりを務める非正規教員のこと。教員採用試験の不合格者の中から任用されることが多い。仕事内容は正規教員と同じで、学級担任や部活動の顧問も任される。一方で給与やボーナスなどの待遇は自治体によってばらつきがあるものの、正規教員を超えることはない。

待遇以上に問題なのは、その身分が極めて不安定なことだ。任用期間は最長で1年。トモキさんのケースように、正規教員が予定より早く復職した場合は「任用事由が消滅した」として、その時点で“クビ”になることもある。民間では考えられない働かされ方に見えるが、それがルールなのだ。

「子どもたちの卒業に立ち合えなかったことが一番悔しかった。(任用事由消滅が)ルールだとしても、そんなルールが許されていることがおかしいと思います」

トモキさんは都道府県などが実施する教員採用試験は受けないまま、大学院卒業後はすぐに臨時的任用教員として働き始めた。正規教員にならなかった理由について、「いずれカナダに移り住むつもりだったから」と説明する。教員免許の書き換え申請をしたカナダ側の担当者からは「日本で教員スキルを身に付けるように」と指示されていたが、仕事内容が同じ臨時的任用教員として経験を積めば事足りると考えたのだという。

ところが、臨時的任用教員として教壇に立つ日々はトラブルの連続だった。

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