JR鶴見線、「都会のローカル線」は新車で変わる? 工業地帯の通勤路線として独自の存在感発揮

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9月の平日、12時台の鶴見発の列車に乗ってみた。平日昼間の列車であるにもかかわらず、座席はすべて埋まり、立っている人も多い。鶴見を出ると、次は昭和の雰囲気をとどめることで最近よく知られるようになった高架駅、国道に着く。戦前に造られたホームは狭くカーブしており、列車とホームの間が開いている。かつては長さ17m程度の車両が走っていたことを考えると、現在の20m車両ではホームとの間が開くのもやむをえないだろう。

国道駅
国道駅は戦前からの高架駅。戦時中の機銃掃射の跡なども残る(筆者撮影)
国道駅 クモハ12
クモハ12形が現役だった時代の国道駅。現在も駅の構造は変わっていない(写真:木村 優光/PIXTA)

国道を出ると鶴見小野、そして当駅折り返しの電車もある弁天橋に着く。同駅はホームから外に出るために構内踏切を渡るが、都市部のJR線では珍しい構造だ。このあたりまでは一般の市街地に近いためか、多くの人が降りる。

次いで、ホームが海に面していることで観光地ともなっている海芝浦駅への支線が分岐する浅野駅、大川への支線が事実上分岐する安善駅、そして前述の急カーブのホームがかつて存在した武蔵白石駅と停車し、浜川崎駅着。ここから終点の扇町までの間は、昼間は極端に列車の本数が少なく、線路も単線となる。途中駅の昭和も、終点の扇町も1面1線だ。

扇町駅
鶴見線の終点、扇町駅。日中の本数は極めて少ない(編集部撮影)

ワンマン対応新車でどう変わる?

半世紀以上前に駅が無人化され、自動券売機もなくなるなど路線の特徴に応じて合理化を進めてきた鶴見線。JRによる発表などはないが、ワンマン対応機器を備えたE131系の投入によって、今後はワンマン運転を行うことも予想される。実際、2022年に全車両をE131系に置き換えた相模線などはワンマン化された。鶴見線は構内踏切のある駅が多く、国道駅のように急カーブ上のホームもあるが、車両に設置される乗降確認用のカメラなどで安全性を確保しつつ実施することになるのではないだろうか。

「都市部のローカル線」として独自の存在感を示す鶴見線は、沿線の工場で働く人にとっては重要な路線である。浜川崎駅で接続する南武線の支線(浜川崎―尻手間)には9月13日から新たな車両として以前は新潟地区で走っていたE127系が投入され、「新車」ではないが久しぶりの新顔登場となった。鶴見線もE131系の投入でこれから姿を変えることになる。新車投入で注目が増しているいま、利便性の向上や安全性の確保にもさらに力を入れていただきたい。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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