JR鶴見線、「都会のローカル線」は新車で変わる? 工業地帯の通勤路線として独自の存在感発揮

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新車は車体側面にカメラを設置し、乗務員が運転台から利用者の乗降を確認する機能などを備え、ワンマン運転に対応する機器を搭載する。また、車内は1人当たりの座席幅を205系の約435mmから460mmへと拡大、車いすやベビーカーのためのフリースペースも設ける。また、運行情報や乗り換え案内を表示する大型ディスプレイを一部のドア上部に設置し、情報提供を充実させる。

これらの点は基本的に他線のE131系に準じているが、やはり大きな違いは車体幅だ。JR東日本横浜支社によると、これは鶴見線の設備などによって車体寸法に制限があるためだ。

実際に、鶴見線はその条件によって珍しい車両が長年使われた例がある。大川駅へと至る大川支線で1996年3月まで使われていた戦前生まれの電車、クモハ12形だ。現在、大川発着の電車は武蔵白石駅には停まらないが、1996年3月までは同駅に大川支線用のホームがあり、大川駅との間をこの車両が1両で折り返し運転していた。これは、大川支線用のホームが急カーブで、鶴見線の他区間を走る長さ20mの車両が入れなかったため、長さ17mと小型でこのホームに入れる古豪のクモハ12形が長く残った。

クモハ12 鶴見線 大川支線
かつて大川支線を走っていたクモハ12形。武蔵白石駅にあったホームが急カーブだったため、長さ17mの同車両が長らく使われた(写真:yamagaku/PIXTA)

国鉄・JR線で戦前製の旧型電車が残ったのは首都圏ではここが最後で、鉄道ファンの注目を集めていたが、老朽化が進行。ほかの区間と共通の20m車両に置き換えるため、ネックだった武蔵白石駅の大川支線用ホームを撤去し、同支線は鶴見―大川間の直通運転に変わった。

工場通勤者向けの独特な路線

では、現在の鶴見線はどんな路線なのかを見てみよう。短い路線ながら、鶴見と扇町を結ぶ本線、途中から分岐して大川、海芝浦へ向かう2つの支線と、行先が多くやや複雑なのが鶴見線の特徴だ。本線も扇町まで行かず途中の弁天橋や武蔵白石、浜川崎までの電車も多い。

鶴見線 浅野駅
海芝浦への支線が分岐する浅野駅。写真の電車は扇町方面行き(編集部撮影)

一部を除けばほぼ工場地帯の中だけに、ダイヤも通勤利用にほぼ特化した形となっており、例えば平日朝7・8時台の鶴見駅発は1時間当たり11本あるが、日中は3本となる。大川駅発の電車は、朝8時台の次は夕方17時台までなく、土休日に至っては1日3本しかない。

改札も独自の運用となっており、1971年以降、鶴見駅以外はすべて無人化されている。以前は鶴見駅の京浜東北線との乗り換えの際に中間改札があったが、2022年に廃止された。同時に同駅以外は自動券売機も廃止され、乗車の際は交通系ICカードを使うか駅にある乗車駅証明書発行機で証明書を受け取り、降車駅で精算することになる。通勤利用がほとんどという路線の特徴が現れているといえる。

鶴見線浅野駅 改札
駅に設置されたSuicaの簡易改札機(編集部撮影)
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