ジャニーズ問題で「CM起用中止の企業」に問う 「ビジネスと人権」専門家の弁護士が抱く疑問
一方、企業内部では広告部門が特別視されており、事業部門やコンプライアンス関連の部門がなかなか口を出せないという背景があったように思える。
広告部門は予算が大きいし、広告代理店と強固な関係にある。お金のあるところに力が集まることを考えれば、構造的な問題がありそうだ。
「SDGsバッジ」で満足していないか
──ビジネスと人権という文脈で、今回のジャニーズ問題はどのような意味を持つものになるのでしょうか。
コンプライアンス、そしてビジネスと人権は企業活動における両輪。今回、ビジネスと人権という考え方も大切にしなければ事業に支障をきたすと気づかせた。エポックメイキングな出来事であり、日本企業が進化する機会になる。
ただ、ビジネスと人権の重要性を数年にわたり伝えてきた身としては、忸怩たる思いもある。
今回の問題は、まさにビジネスと人権のコンセプトに基づいてスポンサー企業が対応すべきだった。自分の影響力のなさ、専門家としての責任を感じ、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」のサポートをしている。
繰り返しになるが、従来のリスクマネジメントやコンプライアンスは、リスクを遮断して自社を守るという発想。ビジネスと人権は、被害者にとって適切な行為を企業が責任をもって行うことにより社会的な信頼を高めて、中長期的な企業の成長につなげるという発想だ。
ESGやSDGsを意識した経営をするなら、今回の問題はしっかり対応すべき案件。ビジネスと人権は国際的にビジネスを展開するうえで欠かせない。「SDGsバッジ」を胸に付けているだけでは、コンセプトを真に理解しているとはいえない。
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