ジャニーズ問題で「CM起用中止の企業」に問う 「ビジネスと人権」専門家の弁護士が抱く疑問

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一方、企業内部では広告部門が特別視されており、事業部門やコンプライアンス関連の部門がなかなか口を出せないという背景があったように思える。

広告部門は予算が大きいし、広告代理店と強固な関係にある。お金のあるところに力が集まることを考えれば、構造的な問題がありそうだ。

「SDGsバッジ」で満足していないか

──ビジネスと人権という文脈で、今回のジャニーズ問題はどのような意味を持つものになるのでしょうか。

コンプライアンス、そしてビジネスと人権は企業活動における両輪。今回、ビジネスと人権という考え方も大切にしなければ事業に支障をきたすと気づかせた。エポックメイキングな出来事であり、日本企業が進化する機会になる。

蔵元左近弁護士
くらもと・さこん/1975年生まれ。日本国弁護士、米国ニューヨーク州弁護士。一橋大学法学研究科、米国コーネル大学ロースクール修了。米国、シンガポールでの駐在経験がある。「ビジネスと人権」の専門家として知られる(写真:本人提供)

ただ、ビジネスと人権の重要性を数年にわたり伝えてきた身としては、忸怩たる思いもある。

今回の問題は、まさにビジネスと人権のコンセプトに基づいてスポンサー企業が対応すべきだった。自分の影響力のなさ、専門家としての責任を感じ、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」のサポートをしている。

繰り返しになるが、従来のリスクマネジメントやコンプライアンスは、リスクを遮断して自社を守るという発想。ビジネスと人権は、被害者にとって適切な行為を企業が責任をもって行うことにより社会的な信頼を高めて、中長期的な企業の成長につなげるという発想だ。

ESGやSDGsを意識した経営をするなら、今回の問題はしっかり対応すべき案件。ビジネスと人権は国際的にビジネスを展開するうえで欠かせない。「SDGsバッジ」を胸に付けているだけでは、コンセプトを真に理解しているとはいえない。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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